デスクワークと腰痛について
腰痛の原因は様々であり、ハードな運動でなる腰痛もあれば、じっとしていてもなる腰痛もある。また、不意にくしゃみをしたり靴下をはこうとしたりする時にもぎっくり腰などの腰痛になったりすることもあります。
とくに腰に影響を与える因子として「仕事」での癖や仕事内容が大きく体に影響を与えていると考えられます。今回は事務仕事での腰痛についてお話ししていきたいと思います。
以下の文を読んでみて下さい。
職場における腰痛に関する日本国内の疫学調査では、腰痛有訴者率が40%~50%、腰痛の既往歴が70%~80%との報告が多い、対象者が1000名を超える規模の国内調査での職業別の腰痛有訴者率は事務42~49%、看護46~65%、介護63%、技能職39%、保安42%、運輸71~74%、清掃69%、建設29%と報告されている。
「腰痛診療ガイドライン2012」から引用
このように様々な職種でかなりの方が腰痛を抱えていることがわかります。
見てみると事務職以外は体を動かしているイメージではないでしょうか?
当院に来院される患者様も事務職の方は多く主訴は肩コリや腰痛が多いです。
そして来院される7割以上の患者様は肩コリと腰痛がセットで痛みを訴える方が多いのです。それほど、見かけによらず体にかかる負担は大きいと私は考えています。
なぜ、体を動かすことが少ない事務職が約2人に1人の割合で腰痛になっているのか考えてみたいと思います。
・デスクワーク時の姿勢について
ほとんどの方がパソコンを前に椅子にすわり、少し前かがみの状態で仕事をされているのではないでしょうか?
実はこの姿勢は運動学的に立っている姿勢よりも、2倍も座っている姿勢の方が腰椎にかかる負担が大きいのです。
その負担の大きい姿勢で一日に何時間も同じ姿勢でデスクワークを続けていたら腰も痛くなるし、腰をかばって余計に首や肩にも痛みは出てしまうでしょう。
少しでも負担を減らすために正しい姿勢で作業をすることは必須といえます。
正しい状態で座れないと腰痛になるだけではなく坐骨神経痛や腰椎の椎間板に過剰な負荷がかかり椎間板ヘルニアを悪化させてしまったりといろんな問題が出てきてしまうことが考えられます。
座る時の注意点として、まず骨盤の坐骨で座ることを意識します。そうすると背筋が伸びてくるのがわかると思います。
また椅子の高さは膝が90°、股関節が90°に屈曲した状態になるよう調節してください。
この角度から大きく離れてしまうといわゆる浅く腰を掛けた状態や極端に丸まった姿勢となり余計に腰への負担が大きくなってしまうのです。
しかし、正しい座り方と言っても股関節が90°に曲がっている状態は人体にとって非生理的な状態になるので座っている状態が長すぎてしまうと股関節が屈曲位で固まった状態となり立ち上がる際に腰に痛みが出たり前傾姿勢で腰が伸びないような状態になってしまうこともあります。
・筋肉や関節への影響
脊柱起立筋
この筋肉は多裂筋、棘筋、最長筋からなる大きな筋肉で走行をみると骨盤から首の方へ伸びる大きな筋肉です。
良い姿勢を保とうと働く筋肉でもあるので前かがみの姿勢が長いと脊柱起立筋が緊張を起こし背中から腰に掛けて痛みや張りが出てきます。
腰痛の原因となりやすい筋肉でもあります。
腰方形筋
脊柱起立筋よりも深い場所にある筋肉です。
姿勢を維持したり骨盤を支えるための筋肉でもあるので座っている際に足を組んだりして骨盤がゆがんだ状態を作ってしまうとこの筋肉が過緊張を起こして腰に痛みがでることがあります。
殿筋群(大殿筋、中殿筋、小殿筋、梨状筋)
殿筋はいろんな筋肉が重なり合っており、その隙間から坐骨神経という大きな神経が走っています。
そのため、坐骨で座ることができず丸まった姿勢で座っていると直接殿筋群が圧迫をうけ過緊張を起こします。筋緊張によって腰痛を引き起こすこともそうですが、殿筋群の隙間を通っている坐骨神経を固くなった筋肉が神経の絞扼をおこしお尻から足まで痛みやしびれが出るようないわゆる坐骨神経痛になることもあります。
椎間関節
いわゆる背骨の関節です。
足を組んで座ったり前かがみでの姿勢が長く座っているとこの椎間関節に負担がかかり、関節の可動域が減少します。そのことで立ち上がる際に腰がイテテテと痛みが出たり前かがみになると腰に痛みが出てしまいます。
・良い姿勢を維持するための工夫
たとえ良い姿勢で座っていても長時間のデスクワークは腰にかなりの負担がかかります。
私自身も注意していても長く座っていると「あー腰が張ってきたな」「腰を伸ばしたくなるなー」って思うことも十分あります。
しかし、少しの工夫で腰の負担を減らし強い痛みが出ないようにしたり慢性化しないような工夫はできます。腰痛が心配な方はこれから痛みがでないように。今腰が痛い方は少しでも痛みを軽減し仕事に支障がでないように是非実践してみてください。
椅子の座り方
椅子の座り方で注意することは
椅子の高さ、パソコンの画面の位置、骨盤を立てる、膝の向き
この4つを意識すると効果的です。
椅子の高さ
椅子の高さは股関節の角度を基準とします。
膝が股関節よりも高い位置とならない、もしくは低くならない高さにしましょう。
ちょうど股関節が90°になるような高さにしてください。
パソコンの画面の位置
画面の高さを少し上げることで下を向く角度を減らし、首や背中、腰にかかる負担を減らします。ノートパソコンであればパソコンの下に3~5㎝ほどの厚めの本などを敷いて高さ調節をしてみてください。
骨盤を立てる
腰痛持ちの多くの方が背中が丸くなっていることが多いです。
この姿勢が腰椎や腰の筋肉に負担をかけて腰痛を引き起こします。
また、腰が丸まった状態で座っていると、坐骨でしっかりと体重を支えることができないため殿筋群に体重がかかっていることが多いです。
これを改善するために骨盤を立てて座ることを意識します。
ご自身で意識することは少し難しいのでタオルや座布団を使いましょう。
タオルはバスタオルほどの大きさのものをたたんで3~5㎝ほどの高さになるようにします。それを、お尻の下に敷きます。その際に注意することはお尻全体に敷くのではなくお尻の半分まで敷きます。
そうすることで、骨盤が自然と前方へ倒れるようにします。
骨盤が前方に倒れているのが感じられれば自然といい姿勢をとれやすくなります。
膝の向き
まず、自然といつも座っているように座ってみてください。
そのさいに片方の膝が外側をむいていたり、両方の膝が開きすぎていたりしませんか?
また、極端に内側に入っていたりしていないか確認をしてみてください。
膝が外側に極端に向いていたり内側に向いていたりすると骨盤や腰椎に捻じれが生じて腰痛の原因になります。
骨盤や腰椎に負担がかからないように膝をまっすぐにすることが大事なのです。
たとえば、右膝が左膝に比べて外側に開いていたとしましょう。
その際は、肩幅くらいに足をひらき、つま先をまっすぐにします。
膝の向きつま先をまっすぐになるように姿勢を維持します。
ただ、このままだと意識していないと膝がまた外側に開いてしまいます。
そうならないように、外側に開いていた側の足の踵にいらないボールペンや消しゴムを挟みます。外側に開くようであれば外側の踵の下に入れます。内側に向くようであれば内側の踵のしたから挟みこむようにします。
そうすることで無意識でも膝がまっすぐ前を向いた状態を維持することが可能になります。
・座ってできる腰痛体操
良い姿勢をとる工夫をしていても腰が辛くなることがあると思います。
少しの時間でも身体を動かしたりストレッチを加えることで腰にかかる負担が減り痛みが和らぎますので、長時間のデスクワークの方は仕事の合間に取り入れてみてください。
前かがみ体操
足を肩幅から足一つ分くらい外側に開きます。がばっと、足を大きく開くかんじです。
足を開いた状態で、床を触るように手を床につけます。その時に目線は足の間から後ろ見るようにします。お尻から腰、背中が伸びるように意識をしてください。息を吐きながら行い吐ききったら、ゆっくりと体を元の位置に戻して行きます。
背骨反らし体操
足を肩幅に開いた状態で正面を向きます。腰に手をあてて、ゆっくりと腰、背中、首と順番に後ろにそらしていきます。
ポイントは初めに骨盤を立てていき、お腹を前に出すように腰を少しづつそらします。
その次に背中を少し反らしていき最後に首をそらします。
体が伸びて気持ちいいな~くらいの感じで気持ちよさを味わうように行うと効果的です。
息をゆっくり吐きながら行い、吐ききったらもとに戻して行きます。
横倒し体操
肩幅に足を開いた状態で正面を向きます。その際に背骨反らし体操と同じように腰に手を当てます。当てた状態で上半身を横方向にたおしていきます。無理して倒さずゆっくりと反対側の腰の側面がじわーっと伸びて気持ち良いな~くらいの強さで気持ちよさを味わうように行います。
息をゆっくり吐きながら行い、吐ききったらもとに戻して行きます。
肩腰ひねり体操
肩幅に足を開き正面を向いた状態からスタートします。
まず体幹の前で片方腕を抱えるように肩のストレッチの姿勢をとります。肩のストレッチを行いながら体幹を肩を伸ばすのと同じ方向にゆっくりと捻っていきます。
この際、息をゆっくり吐きながら行い吐ききったら元に戻していきます。
お尻ストレッチ1
椅子にしっかりと深く座った状態で片方の膝を抱えます。
背中を背もたれにしっかり付けた状態で膝が胸につくように引き付けていきます。
この際、息をゆっくり吐きながら行い吐ききったら元に戻していきます。
お尻ストレッチ2
椅子にしっかりと深く座った状態で片方の足首を反対の足の太ももに載せます。
この時に足が4の字になるような格好になります。この状態からゆっくりと上半身を前かがみに倒していきます。
ゆっくりと息を吐きながら行い無理のない角度で辞めて息が吐ききったら元に戻していきます。
・病院や整骨院、鍼灸院で腰痛を見てもらうタイミング
基準として3日以上痛みがつづく場合は専門家に診てもらうことをお勧めします。
また、朝起きて痛い場合も専門家に診てもらうことをお勧めします。
人は本来、自然治癒力が備わっています。
そのため疲労や使い過ぎによって出た一時的な痛みであれば48時間で身体はリセットされるためこの場合の痛みはなくなります。
しかし、自然治癒力が働いていない場合は自分の力で身体を治すことができないため3日以上痛みが続いたり、いくら寝ても痛みがとれません。
そのため3日以上続く痛みや朝起きた時の痛みがある場合は自分の回復力では補えていないので自然治癒力が出てくるように体の問題を解決していく必要があるのです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
是非、日常生活の問題を解決し快適な日常生活をお仕事を送れるようにご自身のお体と向き合ってみてください。
少しでも私の経験や知識がお役にたっていただければ幸いでございます。
日本橋 浜町 Sunny鍼灸院・整骨院 院長 森 何幾