朝起きられない、立ち上がるとめまいや頭痛がする、午前中は体がだるくて動けない。このような症状に悩んでいるなら、それは起立性調節障障害かもしれません。この記事では、起立性調節障害を改善するための具体的なセルフケアの方法と、整体によるアプローチを分かりやすく解説します。

起立性調節障害は、自律神経の乱れによって血圧調節がうまくいかなくなることで起こります。つまり、自律神経を整え、血流を改善することで症状は確実に良くなっていきます。実際に、適切なセルフケアと整体を組み合わせることで、多くの方が日常生活を取り戻しています。

この記事を読むことで、起立性調節障害の仕組みが理解でき、今日から始められる具体的な対処法が分かります。朝の起き方から水分・塩分の摂取方法、自宅でできるストレッチ、自律神経を整えるツボ押しまで、すぐに実践できる内容をお伝えします。さらに、整体がなぜ起立性調節障害に効果的なのか、どのような症状改善が期待できるのかについても詳しく説明します。

学校や仕事に行けない、周囲に理解してもらえないという悩みを抱えている方も多いでしょう。この記事では、周囲とのコミュニケーション方法や、無理なく活動を続けるための工夫についても触れています。一人で抱え込まず、適切な対処をすることで、症状は必ず改善へと向かいます。

起立性調節障害は適切な対応をすれば改善できる状態です。この記事があなたの回復への道しるべとなり、明るい毎日を取り戻すきっかけになれば幸いです。

1. 起立性調節障害とは何か

起立性調節障害は、立ち上がった時や起き上がった時に、体が血圧や心拍数を適切に調整できず、脳への血流が一時的に不足してしまう状態です。朝起きられない、立ちくらみがする、全身がだるいといった症状が続き、日常生活に大きな影響を及ぼします。

この状態は決して「怠けている」わけでも「気持ちの問題」でもありません。自律神経の働きが乱れることで起こる身体的な変調であり、本人の意志でコントロールすることが難しい症状です。特に思春期の子どもに多く見られますが、大人でも発症することがあります。

健康な人の場合、立ち上がると重力によって血液が下半身に集まりますが、自律神経が即座に反応して血管を収縮させ、心拍数を上げることで脳への血流を保ちます。しかし起立性調節障害では、この自動調整機能がうまく働かず、立った時に脳への血流が足りなくなってしまうのです。

症状の程度は人によって大きく異なり、軽度の場合は朝だけ調子が悪い程度ですが、重度になると一日中横になっていなければならないこともあります。適切な対処をすることで改善が期待できる状態であり、焦らず着実に取り組むことが大切です。

1.1 起立性調節障害の主な症状

起立性調節障害の症状は多岐にわたり、人によって現れる症状の組み合わせや程度が異なります。最も特徴的なのは、午前中に症状が強く現れ、午後から夕方にかけて徐々に楽になっていくという日内変動です。この特徴は、周囲からの理解を得にくい要因にもなっています。

朝なかなか起きられない、目覚めても体が重くて動けないという症状は、多くの方が最初に気づく変化です。目覚まし時計が聞こえなかったり、聞こえても体が反応しなかったりします。これは単なる寝坊ではなく、脳への血流が不足している状態が続いているためです。

症状のカテゴリー 具体的な症状 起こりやすいタイミング
循環器系の症状 立ちくらみ、めまい、動悸、息切れ、胸の痛み 起床時、立ち上がった時、長時間立っている時
全身症状 倦怠感、疲労感、体のだるさ、力が入らない 午前中を中心に一日中
頭部の症状 頭痛、頭重感、ぼーっとする、集中力の低下 起床後から午前中
消化器系の症状 食欲不振、吐き気、腹痛、下痢 朝食時、午前中
睡眠に関する症状 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きられない 夜間から朝

立ちくらみやめまいは、起立時だけでなく、入浴時や暑い場所に長くいる時にも起こりやすくなります。血管が拡張して血圧が下がりやすい状況では、症状が出やすいためです。また、満員電車やエレベーターなど、密閉された空間でも症状が悪化することがあります。

顔色が悪くなったり、唇が青白くなったりする見た目の変化も特徴的です。これは血流が不足しているサインであり、周囲の人が気づくことができる重要な指標となります。反対に、横になって休むと顔色が戻ってくることも観察されます。

注意力や集中力の低下は、学業や仕事に直接影響を与えます。脳への血流が十分でないため、頭がぼーっとして考えがまとまらない、記憶力が落ちる、簡単な計算ができないといった状態になります。これは本人の能力の問題ではなく、身体的な要因によるものです。

イライラしやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりする精神的な症状も見られます。体調不良が続くことのストレスに加え、自律神経の乱れが感情のコントロールにも影響を与えるためです。

1.2 発症しやすい年齢と特徴

起立性調節障害は、小学校高学年から中学生、高校生にかけての思春期に最も多く発症します。この時期は身体が急速に成長する一方で、自律神経の発達が追いつかず、バランスを崩しやすいためです。特に10歳から16歳の間に発症するケースが大半を占めています。

思春期は身長が急激に伸びる時期であり、心臓から脳までの距離が長くなることで、血液を送り上げることがより困難になります。成長のスピードに循環器系の機能が適応しきれず、起立時の血圧調整がうまくいかなくなるのです。

性別で見ると、やや女子に多い傾向がありますが、男子でも珍しくありません。女子の場合は、ホルモンバランスの変化や月経の開始なども自律神経に影響を与える要因となります。体型的には、やせ型で筋肉量が少ない体格の人に起こりやすいという特徴も見られます。

年齢層 特徴 注意すべき点
小学校高学年 発症初期で気づかれにくい、学校を休みがちになる 朝の症状に注目、無理に登校させない配慮
中学生 最も発症が多い時期、学業への影響が大きい 進路への不安、周囲の理解が重要
高校生 症状が重症化しやすい、不登校につながりやすい 将来への焦り、段階的な復帰計画
成人 思春期から持ち越している、新たに発症することもある 仕事との両立、ストレス管理

真面目で几帳面、完璧主義的な性格の人に多く見られるという傾向もあります。自分に厳しく、周囲の期待に応えようと無理をしがちな性質が、ストレスとなって自律神経の乱れを招きやすいのです。また、環境の変化に敏感で、新しい状況に適応するのに時間がかかる人も発症しやすいとされています。

季節の変わり目、特に春先や梅雨時期、秋口に症状が悪化しやすいという特徴があります。気圧の変動や気温の変化が自律神経に影響を与えるためです。また、入学や進級、転校、引っ越しなど、生活環境が大きく変わる時期にも発症しやすくなります。

家族に同じような症状がある場合、発症リスクが高まる傾向も見られます。遺伝的な要因というよりも、自律神経の調整機能の発達パターンや体質が似ていることが関係していると考えられています。

成人になってからも症状が続くケースもあれば、思春期を過ぎると自然に改善していくケースもあります。しかし放置せず適切な対処を続けることで、症状の改善速度を速め、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。

1.3 自律神経との関係

起立性調節障害を理解する上で、自律神経の働きを知ることは欠かせません。自律神経は、私たちが意識しなくても自動的に内臓の働きや血圧、心拍数などを調整している神経系です。呼吸、消化、体温調節、血液循環など、生命維持に必要な機能を24時間休まずコントロールしています。

自律神経は、活動時に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経の二つから成り立っています。この二つの神経がバランスよく切り替わることで、私たちは状況に応じて適切に体を機能させることができるのです。

健康な状態では、立ち上がると交感神経が素早く優位になり、血管を収縮させて血圧を上げ、心拍数を増やして脳への血流を確保します。この反応は瞬時に、そして自動的に起こるため、普段は立ちくらみを感じることはありません。ところが起立性調節障害では、この交感神経の反応が遅れたり、十分に働かなかったりすることで、立ち上がった時に血圧が下がってしまうのです。

神経の種類 主な働き 起立性調節障害での状態
交感神経 心拍数を上げる、血管を収縮させる、血圧を上げる、活動を促す 起立時の反応が遅い、働きが弱い、朝方に活性化しにくい
副交感神経 心拍数を下げる、血管を拡張させる、リラックスを促す、消化を助ける 夜間に過度に優位になる、日中も働きすぎる、切り替わりが鈍い

自律神経の乱れは、血圧調整だけでなく、様々な身体機能に影響を及ぼします。消化機能の低下により食欲がなくなったり、体温調節がうまくいかず手足が冷えたり、睡眠のリズムが崩れて夜眠れなくなったりします。これらすべてが相互に関連しながら、症状を複雑にしているのです。

思春期に自律神経が乱れやすい理由は複数あります。身体の急激な成長に伴い、血管系や循環器系も変化しますが、自律神経の発達は後からゆっくりと進むため、一時的にアンバランスな状態になります。また、ホルモンバランスの変化も自律神経に大きく影響します。

ストレスも自律神経の乱れを招く大きな要因です。学業のプレッシャー、人間関係の悩み、将来への不安など、思春期特有のストレスが交感神経を過度に刺激し続けると、結果的に神経が疲弊して適切に機能しなくなります。慢性的なストレス状態では、本来休むべき時に交感神経が働き続け、活動すべき時に十分に働けないという逆転現象が起こることもあります。

生活リズムの乱れも自律神経に直結します。夜更かしや不規則な食事時間は、自律神経の切り替わりのタイミングを狂わせます。本来、朝は交感神経が優位になって活動モードに入り、夜は副交感神経が優位になって休息モードに入るという自然なリズムがあります。しかし生活が不規則になると、このリズムが崩れ、朝に交感神経が活性化せず起きられない、夜に副交感神経が優位にならず眠れないという悪循環に陥ります。

運動不足も自律神経の働きを低下させる要因です。適度な運動は交感神経を刺激し、その後の休息で副交感神経を活性化させるという自然な切り替えを促します。しかし運動が不足すると、この切り替えの練習ができず、自律神経の調整能力が育ちません。

自律神経は、首や背骨の周辺を通っています。そのため、姿勢の悪さや筋肉の緊張、骨格のゆがみなどが、神経の働きに物理的な影響を与えることがあります。長時間のスマートフォン使用による首の前傾姿勢や、猫背、骨盤のゆがみなどは、自律神経の通り道を圧迫したり、血流を悪くしたりする可能性があります。

興味深いことに、腸内環境と自律神経には密接な関係があることが分かってきています。腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経と複雑に絡み合いながら、互いに影響を及ぼし合っています。腸内環境が乱れると自律神経のバランスも崩れやすく、逆に自律神経が乱れると消化機能も低下するという相互作用があります。

自律神経を整えることは、起立性調節障害の改善において中心的な役割を果たします。薬に頼るだけでなく、生活習慣やセルフケア、整体などによって自律神経のバランスを取り戻していくことが、根本的な改善につながるのです。

2. 起立性調節障害の原因を理解する

起立性調節障害が起こる原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症します。改善への道筋を見つけるには、まず自分の体で何が起きているのかを正しく理解することが大切です。原因を知ることで、どのようなセルフケアが効果的なのか、なぜ整体でのアプローチが有効なのかが見えてきます。

ここでは起立性調節障害を引き起こす主な原因について、体のメカニズムと生活環境の両面から詳しく見ていきましょう。それぞれの原因がどのように症状につながっているのかを理解することで、あなた自身に合った改善方法を選ぶ手がかりが得られます。

2.1 血圧調節機能の低下

起立性調節障害の中心にあるのが、血圧を適切にコントロールする機能の低下です。私たちの体は、立ち上がったときに重力によって血液が下半身に溜まってしまわないよう、自動的に血管を収縮させて血圧を保つ仕組みを持っています。この調節がうまく働かなくなると、立ち上がった瞬間に脳への血流が不足し、めまいや立ちくらみといった症状が現れます。

健康な状態では、横になっている状態から立ち上がると、交感神経が活発に働いて末梢の血管を締めます。同時に心臓の拍動も速くなり、脳に必要な血液をしっかりと送り届けます。この一連の反応はわずか数秒の間に起こり、私たちが意識することもありません。

しかし起立性調節障害では、この自動調節システムに遅れや不具合が生じています。具体的には次のような状態が体の中で起きています。

調節機能の問題 体に起きること 現れやすい症状
血管収縮の反応が遅い 立ち上がっても血管が締まらず、血液が下半身に溜まる 立ちくらみ、めまい、視界が暗くなる
心拍数の増加が不十分 脳に送る血液量が確保できない ふらつき、頭がぼんやりする、集中力の低下
血圧上昇の反応が弱い 起立時の血圧が基準値まで上がらない 全身の倦怠感、動悸、息切れ
調節の持続時間が短い 立っている間ずっと血圧を保てない 長時間の立位で悪化、朝礼や通勤での不調

この血圧調節機能の低下には、自律神経の働きが深く関わっています。自律神経は血管の太さをコントロールする司令塔であり、この司令塔がうまく機能しないと、血圧の維持が困難になるのです。

特に思春期の子どもでは、体の成長スピードに自律神経の発達が追いつかないことで血圧調節が不安定になることがあります。身長が急激に伸びる時期には、血液を全身に送るための負担が一気に増えますが、それに見合った循環機能がまだ備わっていないのです。

また、水分摂取量が少ない状態が続くと、血液の総量自体が減ってしまい、血圧を保つことがさらに難しくなります。朝起きたときに特に症状が強く出るのは、睡眠中に水分が失われて血液量が減っている上に、長時間横になっていた状態から急に立ち上がることで、血圧調節機能への負荷が一気にかかるためです。

血管壁の柔軟性も重要な要素です。普段から運動習慣がなく、じっとしている時間が長いと、血管が硬くなって反応が鈍くなります。血管が柔軟に収縮・拡張できなければ、状況に応じた血圧調節は困難です。

さらに、下半身の筋肉量が少ないことも影響します。ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、下半身の血液を心臓へ押し戻すポンプの役割を果たしています。この筋肉が十分に働かないと、血液が下肢に溜まりやすくなり、脳への血流確保がより困難になります。

2.2 生活習慣の乱れが与える影響

毎日の生活習慣は、起立性調節障害の発症や症状の重さに大きく関わっています。不規則な生活を続けていると、体内時計が狂い、自律神経のバランスが崩れやすくなります。生活リズムの乱れは自律神経の正常な働きを妨げる最大の要因といっても過言ではありません。

就寝時間と起床時間がバラバラだと、体は「いつ活動して、いつ休むべきか」という判断ができなくなります。本来、朝になると交感神経が優位になって体を活動モードに切り替え、夜には副交感神経が優位になって休息モードに入ります。しかし夜更かしや朝寝坊を繰り返すと、この切り替えがうまくいかなくなり、朝になっても交感神経が十分に働かないため、血圧が上がらず起き上がることが困難になります。

睡眠不足も深刻な問題です。睡眠中は体の修復や自律神経の調整が行われる大切な時間ですが、睡眠時間が不足すると、これらの回復プロセスが不完全なまま翌日を迎えることになります。特に深い睡眠が得られないと、自律神経の疲労が蓄積し、血圧調節機能がさらに低下していきます。

乱れた生活習慣 体への具体的な影響 起立性調節障害との関連
夜更かしと朝寝坊 体内時計がずれて自律神経の切り替えが遅れる 朝の血圧上昇が起こらず起床困難になる
不規則な食事時間 血糖値の変動が大きくなり内臓への負担増加 体全体のエネルギー循環が悪化し倦怠感が強まる
朝食を抜く習慣 午前中のエネルギー不足と血糖値の不安定化 立ち上がるための体力が確保できず症状悪化
運動不足 筋力低下と血流の滞り、心肺機能の衰え 血液循環能力が低下し症状が慢性化
水分摂取不足 血液量の減少と血液の粘度上昇 起立時の血圧維持がさらに困難になる
長時間のゲームやスマートフォン使用 姿勢の悪化と目の疲労、交感神経の過緊張 首や肩の血流低下と自律神経の乱れ

食生活の偏りも見逃せません。栄養バランスが崩れると、血液を作る材料や血管を健康に保つ栄養素が不足します。特に鉄分やビタミンB群、たんぱく質が不足すると、血液の質が低下し、酸素を全身に運ぶ能力が落ちてしまいます。

インスタント食品や加工食品に偏った食事は、塩分が過剰になる一方で、必要なミネラルやビタミンが不足しがちです。また、甘いものや炭水化物ばかり食べていると、血糖値の急上昇と急降下を繰り返し、それに伴って自律神経も乱れます。

運動不足の影響は想像以上に大きいものです。体を動かさない生活が続くと筋肉量が減り、血液を心臓に戻すポンプ機能が弱まります。さらに、運動は自律神経を刺激して活性化させる効果があるため、運動習慣がないと自律神経の働きも鈍くなっていきます。

現代の生活では、学校でも家でも座っている時間が長く、歩く機会も減っています。通学で電車やバスを使い、学校では授業中ずっと座り、帰宅後もゲームやスマートフォンで時間を過ごすという生活パターンでは、体を動かす時間がほとんどありません。

また、冷暖房の効いた環境で過ごす時間が長いことも、体温調節機能を鈍らせます。暑さや寒さに対応して血管を拡張したり収縮したりする機能が使われないと、自律神経の反応が鈍くなり、血圧調節能力も低下していきます。

入浴習慣の変化も影響しています。湯船に浸からずシャワーだけで済ませる人が増えていますが、湯船にゆっくり浸かることは自律神経を整える効果があります。温かいお湯に浸かることで血管が広がって血流が良くなり、その後の体温低下とともに自然な眠気が訪れ、質の良い睡眠につながります。

夜遅くまで明るい光を浴びていることも問題です。スマートフォンやパソコンの画面から出るブルーライトは、睡眠を促すホルモンの分泌を妨げます。本来なら日が沈むにつれて体は休息モードに入るはずが、夜遅くまで明るい光を浴び続けることで、体内時計が乱れてしまうのです。

2.3 ストレスと心理的要因

心と体は密接につながっており、精神的なストレスは自律神経に直接的な影響を与えます。起立性調節障害を抱える人の多くが、何らかのストレスや心理的負担を感じていることが知られています。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、血圧調節機能にも悪影響が及びます

ストレスを感じると、体は「戦うか逃げるか」という反応を起こし、交感神経が活発になります。本来これは一時的な反応で、ストレスが去れば元に戻るのですが、慢性的なストレス状態が続くと、交感神経が常に緊張した状態になり、副交感神経とのバランスが取れなくなります。

この状態が続くと、夜になっても交感神経の興奮が収まらず、眠りが浅くなります。睡眠中に体を十分に回復させることができないため、翌朝になっても疲労が残り、さらに自律神経の乱れが悪化するという悪循環に陥ります。

学校生活における様々なストレスも大きな要因です。友人関係の悩み、勉強のプレッシャー、部活動での人間関係、進路への不安など、思春期の子どもたちは多くのストレスにさらされています。特に、周囲から理解されないことへの孤独感や、「怠けている」と誤解されることへの苦しさは、症状をさらに悪化させる要因になります。

ストレスの種類 自律神経への影響 起立性調節障害への影響
学業のプレッシャー 交感神経の過緊張と副交感神経の働き低下 睡眠の質低下により朝の起床困難が悪化
対人関係の悩み 持続的な緊張状態で自律神経が休まらない 症状への不安が強まり悪循環を形成
家庭環境の問題 安心して休息できず神経が常に警戒状態 回復に必要な休養が取れず症状が長引く
将来への不安 漠然とした緊張が続き心身の疲労蓄積 体全体の機能低下で症状が多様化
完璧主義的な性格 常に自分を追い込み休息が不十分 無理を重ねて症状悪化と回復の遅れ

真面目で責任感の強い性格の人ほど、起立性調節障害になりやすい傾向があります。「休んではいけない」「周りに迷惑をかけられない」という思いが強いあまり、体の限界を超えて無理を続けてしまうのです。その結果、自律神経はさらに疲弊し、症状は悪化していきます。

また、症状そのものがストレスになることも見逃せません。朝起きられないことで遅刻が続き、周囲から「やる気がない」と思われたり、保護者から叱責されたりすることで、自己肯定感が下がります。「自分はダメな人間だ」という思いが強まると、それ自体が大きなストレスとなり、症状をさらに悪化させる要因になります。

学校を休むことへの罪悪感も心理的な負担になります。クラスメイトに遅れを取ることへの焦り、授業についていけなくなる不安、友人関係が疎遠になる寂しさなど、休養が必要な時期であっても心が休まらない状態が続きます。

家庭内での理解不足も深刻な問題です。保護者が起立性調節障害についての正しい知識を持たず、「気合が足りない」「甘えている」などと言われると、本人は深く傷つき、家庭が安心できる場所ではなくなってしまいます。理解されない苦しさは、想像以上に大きなストレスとなります。

過去のトラウマや不安障害が背景にあるケースもあります。いじめを受けた経験や、大きなショックを受けた出来事がきっかけで、自律神経のバランスが崩れることがあります。こうした心理的な傷は、体の症状として現れることが少なくありません。

環境の変化もストレスになります。進学、転校、引っ越しなど、生活環境が大きく変わるタイミングで発症することが多いのは、新しい環境への適応に心身のエネルギーを使い果たしてしまうためです。慣れ親しんだ環境を離れることは、思っている以上に大きな負担となります。

ストレスに対する感受性は人それぞれ異なり、同じ出来事でも受け止め方によって影響の大きさが変わります。几帳面で繊細な性格の人は、小さなことでも気にしやすく、ストレスを溜め込みやすい傾向があります。また、感情を表現することが苦手で、悩みを一人で抱え込んでしまうタイプの人も、知らず知らずのうちにストレスが蓄積していきます。

睡眠と覚醒のリズムは、精神状態と深く結びついています。不安が強いと寝つきが悪くなり、心配事で夜中に目が覚めることもあります。質の良い睡眠が取れないと、日中の活動に必要なエネルギーが充電できず、疲労感や倦怠感が強まります。

周囲の何気ない言葉も、本人にとっては大きな心理的負担になることがあります。「そんなに具合が悪そうに見えない」「昼からは元気そうだね」といった言葉は、悪意がなくても本人を追い詰めます。起立性調節障害の症状は午前中に強く、午後になると楽になることが多いのですが、それを「やる気の問題」と誤解されることが、さらなるストレスを生むのです。

心理的な要因と身体的な症状は、互いに影響し合いながら症状を複雑化させていきます。ストレスで自律神経が乱れると症状が悪化し、症状が悪化すると新たなストレスが生まれるという連鎖が続きます。この悪循環を断ち切るには、体へのアプローチだけでなく、心のケアも同時に行っていくことが大切です。

環境を調整することも重要な対策になります。無理のない範囲で活動できるよう、学校や家庭での過ごし方を工夫し、周囲の理解と協力を得ることで、心理的な負担を軽減できます。焦らず、自分のペースで回復を目指すことが、長期的には最も効果的な道となります。

3. セルフケアによる起立性調節障害の治し方

起立性調節障害の改善には、日々の生活の中で実践できるセルフケアが基本となります。症状の程度には個人差がありますが、生活習慣を見直し、体に負担をかけない工夫を続けることで、多くの方が徐々に変化を実感しています。ここでは、自宅で無理なく取り組める具体的な方法をご紹介します。

3.1 朝の起き方と生活リズムの整え方

起立性調節障害のある方にとって、朝は最も症状が出やすい時間帯です。血圧が上がりにくく、脳への血流が不足しやすいため、急に起き上がると立ちくらみやめまいが強く出てしまいます。朝の過ごし方を工夫することで、この時間帯の辛さを大きく軽減できます。

3.1.1 段階的な起床の実践方法

目が覚めたら、すぐにベッドから出ようとせず、まずは布団の中で体を少しずつ動かし始めることが重要です。足首を曲げ伸ばしする、膝を軽く曲げる、手をグーパーするなど、簡単な動きで構いません。これらの動作によって筋肉が収縮し、下半身にたまっていた血液が心臓に戻りやすくなります。

次に、横向きになってから上半身をゆっくりと起こします。この時も焦らず、少なくとも30秒から1分ほどかけて体を起こすようにします。そのまま座った状態で足を布団から出し、しばらく様子を見ます。急激な姿勢の変化を避け、段階を踏んで体を慣らしていくことが、朝の症状を和らげる最も基本的な方法です。

3.1.2 目覚めを促す環境づくり

カーテンを開けて朝の光を浴びることで、体内時計がリセットされます。光は自律神経の働きを活性化させる重要な要素であり、起立性調節障害の改善には欠かせません。起床時刻の30分前にタイマーでカーテンを自動的に開ける機能を使ったり、家族に協力してもらったりするのも効果的です。

部屋の温度にも配慮が必要です。冬場は特に、寒さで血管が収縮すると血圧の調整がさらに難しくなります。起床前に暖房をつけておくことで、体への負担を減らすことができます。

3.1.3 生活リズムを安定させる就寝時刻の設定

毎日同じ時刻に寝て同じ時刻に起きるという規則正しい生活が、自律神経のバランスを整える基盤になります。週末だからといって夜更かしをしたり、朝遅くまで寝ていたりすると、せっかく整いかけたリズムが乱れてしまいます。

時間帯 推奨される行動 避けるべき行動
起床後すぐ 布団の中で手足を動かす、横向きから起き上がる 急に飛び起きる、すぐに立ち上がる
午前中 日光を浴びる、軽い活動をする 再び横になって寝る、暗い部屋に留まる
日中 適度な活動と休息のバランス 過度な運動、長時間の座位
夕方以降 リラックスする時間を作る 激しい運動、強い光を浴び続ける
就寝前 一定時刻に寝る準備、部屋を暗くする スマートフォンを見続ける、カフェインを摂る

3.2 効果的な水分と塩分の摂取方法

起立性調節障害では、血液量が不足していたり、血管を収縮させる機能が弱まっていたりすることが原因で、立ち上がった時に血圧が下がりやすくなっています。水分と塩分を適切に摂取することで循環血液量を増やし、血圧を維持しやすくすることが、症状の軽減につながります。

3.2.1 一日に必要な水分量の目安

成長期のお子さんであれば、体重1キログラムあたり40ミリリットル程度を目安に、一日に1.5リットルから2リットル程度の水分を摂ることが推奨されています。ただし、一度に大量に飲むのではなく、こまめに分けて飲むことが大切です。朝起きた時、午前中、昼食時、午後、夕方、夕食時など、一日を通して少しずつ摂取します。

特に朝は、睡眠中に失われた水分を補給する重要な時間です。起床後にコップ一杯の水を飲む習慣をつけることで、血液の流れがスムーズになり、立ち上がる際の症状が和らぎやすくなります。

3.2.2 塩分摂取の適切な方法

通常、塩分の摂りすぎは健康に良くないとされていますが、起立性調節障害の方の場合、適度な塩分摂取が血圧の維持に役立ちます。一日に10グラム程度を目安として、食事の中で自然に取り入れることが理想的です。

梅干しや塩昆布、みそ汁など、日本の伝統的な食品には適度な塩分が含まれています。これらを毎日の食事に取り入れることで、無理なく必要な塩分を摂ることができます。ただし、加工食品ばかりに頼ると塩分過多になりやすいため、自然な形での摂取を心がけます。

3.2.3 症状が出た時の対応

立ちくらみやめまいを感じた時には、すぐに座るか横になって休むことが第一です。そして、落ち着いたら水分を摂ります。スポーツドリンクのように塩分や糖分が含まれた飲み物は、吸収が早く、素早く血液量を増やすのに適しています。

時間帯 摂取のポイント おすすめの飲み物や食品
起床時 失われた水分を補給する 常温の水、白湯
朝食時 塩分を含む食事と一緒に みそ汁、梅干し、麦茶
午前中 こまめに少量ずつ 水、お茶
昼食時 食事と一緒にしっかり摂る 水、お茶、スープ類
午後 活動の合間に補給 水、麦茶
夕食時 一日の不足分を補う 水、お茶、みそ汁
就寝前 適量を摂る(摂りすぎない) 常温の水

3.3 自宅でできるストレッチと軽い運動

起立性調節障害があると、症状のために活動量が減り、それがさらに体力の低下や自律神経の乱れにつながるという悪循環に陥りがちです。無理のない範囲で体を動かすことは、血流を改善し、自律神経の働きを整えるために非常に重要です。

3.3.1 下半身の筋肉を鍛える重要性

立ち上がった時に血液が下半身にたまってしまうのを防ぐには、ふくらはぎや太ももの筋肉を強化することが効果的です。これらの筋肉は、血液を心臓に送り返すポンプのような役割を果たしています。筋肉量が増えることで、立位での血圧維持がしやすくなり、症状の軽減が期待できます

3.3.2 寝たままできるストレッチ

朝起きた時や、体調が優れない時には、ベッドの上で行えるストレッチから始めます。仰向けに寝た状態で、足首をゆっくりと上下に動かす、膝を曲げて胸に引き寄せる、両手を頭の上に伸ばして全身を伸ばすなど、簡単な動きで構いません。

次に、うつ伏せになって、両手を床について上半身をゆっくりと起こします。背中を反らせることで、背骨周りの筋肉がほぐれ、自律神経の通り道である脊柱周辺の血流が良くなります。ただし、無理に反らせると腰を痛める可能性があるため、心地よいと感じる範囲で行います。

3.3.3 座ってできる運動

椅子に座った状態で行える運動も有効です。かかとを床につけたまま、つま先を上げ下げする、逆につま先を床につけたまま、かかとを上げ下げする動作を繰り返します。これによりふくらはぎの筋肉が収縮し、血液の循環が促進されます。

太ももの筋肉を鍛えるには、座ったまま片足ずつ膝を伸ばし、床と水平になる位置で数秒間保持します。最初は5秒程度から始め、慣れてきたら10秒、15秒と伸ばしていきます。両足を交互に行うことで、無理なく続けられます。

3.3.4 立って行う軽い運動

体調が良い日には、立った状態での運動も取り入れます。壁や椅子の背もたれに手を置いて体を支えながら、かかとの上げ下げを行います。ゆっくりとした動作で、ふくらはぎの筋肉を意識しながら行うことが大切です。

スクワットも効果的ですが、最初は浅く膝を曲げる程度にとどめ、慣れてきたら少しずつ深くしていきます。急に深くしゃがんだり、勢いよく立ち上がったりすると、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。

運動の種類 実施方法 回数の目安 効果
足首の曲げ伸ばし 仰向けまたは座った状態で行う 20回×2セット 血流促進、むくみ予防
膝の曲げ伸ばし 座った状態で片足ずつ 10回×2セット 太ももの筋力強化
かかとの上げ下げ 壁に手をついて立った状態 15回×2セット ふくらはぎ強化、血液循環
浅いスクワット 椅子の背に手を置いて 5回から始める 下半身全体の筋力向上
全身伸ばし 仰向けで手足を伸ばす 10秒×3回 筋肉のこわばり解消

3.3.5 運動を行う時の注意点

どの運動も、無理をせず、体調に合わせて行うことが何より大切です。症状が強い日には休み、調子の良い日に少しずつ取り組むというスタンスで構いません。運動の最中や直後にめまいや立ちくらみを感じたら、すぐに中止して横になります。

午前中は症状が出やすいため、運動は午後の調子が良い時間帯に行うのが理想的です。また、食後すぐは消化のために血液が胃腸に集中するため、食後1時間以上空けてから行うようにします。

3.4 睡眠の質を高める習慣

質の良い睡眠は、自律神経のバランスを整える上で欠かせません。夜間にしっかりと休息をとることで、日中の活動に必要なエネルギーが蓄えられ、体の回復力も高まります。起立性調節障害の改善には、睡眠時間の確保だけでなく、睡眠の質そのものを向上させることが重要です。

3.4.1 就寝時刻と起床時刻を一定にする

体内時計を整えるために最も基本的なのは、毎日同じ時刻に寝て同じ時刻に起きることです。休日だからといって夜遅くまで起きていたり、昼過ぎまで寝ていたりすると、せっかく整いかけたリズムが崩れてしまいます。

理想的な睡眠時間は、成長期であれば8時間から9時間程度です。朝7時に起きる必要があるなら、夜10時から11時には布団に入るという計算になります。最初は眠れなくても、決まった時刻に布団に入る習慣をつけることで、徐々に体が慣れていきます。

3.4.2 寝る前の過ごし方

就寝の1時間から2時間前には、スマートフォンやパソコン、テレビなどの画面を見るのを控えます。これらの画面から発せられる光は、睡眠を促すホルモンの分泌を妨げ、寝つきを悪くするため、睡眠の質を下げてしまいます。

代わりに、ゆったりとした音楽を聴いたり、軽い読書をしたり、家族と穏やかな会話を楽しんだりする時間にします。入浴も効果的で、就寝の1時間から2時間前にぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、体の深部体温が徐々に下がり、自然な眠気が訪れやすくなります。

3.4.3 寝室の環境を整える

部屋の明るさ、温度、湿度、音など、寝室の環境は睡眠の質に大きく影響します。寝る時には部屋を暗くし、カーテンやブラインドで外からの光を遮ります。真っ暗にするのが怖い場合は、足元に小さな明かりを置く程度にとどめます。

室温は夏場なら26度から28度、冬場なら18度から20度程度が快適とされています。寝具も季節に合わせて調整し、暑すぎず寒すぎない状態を保ちます。乾燥する時期には加湿器を使い、湿度を50パーセントから60パーセント程度に保つことで、喉や鼻の粘膜が乾燥するのを防ぎます。

3.4.4 昼寝の取り方

日中に強い眠気を感じる時には、短時間の昼寝が有効です。ただし、長時間寝てしまうと夜の睡眠に影響するため、15分から20分程度に抑えます。午後3時以降の昼寝も、夜の寝つきを悪くする原因になるため避けます。

横になって完全に寝入るのではなく、椅子に座ったまま目を閉じて休むという方法でも、十分にリフレッシュできます。タイマーをかけて、決めた時間で必ず起きるようにすることが大切です。

時間帯 推奨される行動 睡眠への影響
起床後 朝日を浴びる 体内時計をリセットし、夜の眠気を促す
午前中 活動的に過ごす 適度な疲労が良い睡眠につながる
昼食後 短時間の昼寝(15分から20分) 午後の活動をスムーズにする
夕方 激しい運動は避ける 興奮状態が続くと寝つきが悪くなる
夕食後 リラックスして過ごす 副交感神経が優位になり眠りやすくなる
就寝1時間前 画面を見ない、照明を落とす 睡眠ホルモンの分泌を促進

3.5 食事で改善する栄養バランス

起立性調節障害の改善には、バランスの取れた食事が欠かせません。特定の栄養素が不足すると、自律神経の働きが乱れたり、血液を作る機能が低下したりして、症状が悪化する可能性があります。毎日の食事内容を見直すことで、体の内側から症状の改善を支えることができます。

3.5.1 三食をきちんと食べることの大切さ

朝食を抜いたり、昼食や夕食を不規則な時間に食べたりすると、血糖値が不安定になり、体のエネルギーが足りなくなります。特に朝食は、夜間の絶食状態を終えて体を目覚めさせる重要な役割を持っています。朝食を食べることで体温が上がり、脳や体が活動しやすい状態になります。

食欲がない朝でも、少量でも良いので何か口にすることが大切です。バナナ一本とヨーグルト、おにぎり一個とみそ汁など、無理なく食べられるものから始めます。徐々に体が慣れてくると、自然と食欲も戻ってきます。

3.5.2 自律神経を整える栄養素

自律神経の働きを支えるには、ビタミン類やミネラルが重要です。特にビタミンB群は、神経の機能を正常に保ち、エネルギーを作り出すために必要な栄養素です。豚肉、鶏肉、魚、卵、大豆製品、玄米、雑穀などに多く含まれています。

ビタミンCは、ストレスへの抵抗力を高め、自律神経のバランスを整える働きがあります。野菜や果物に豊富に含まれており、特にブロッコリー、ピーマン、キウイフルーツ、いちごなどが良い供給源です。

カルシウムやマグネシウムといったミネラルは、神経の興奮を抑え、リラックスした状態を作るのに役立ちます。乳製品、小魚、海藻類、ナッツ類などを意識して取り入れることで、これらのミネラルを効率よく摂取できます。

3.5.3 貧血予防のための鉄分摂取

起立性調節障害のある方の中には、貧血を合併している方も少なくありません。鉄分が不足すると、血液が十分に酸素を運べなくなり、めまいや倦怠感がさらに強くなります。レバー、赤身の肉、魚、ほうれん草、小松菜、ひじきなどに鉄分が多く含まれています。

鉄分の吸収を良くするには、ビタミンCを一緒に摂ることが効果的です。肉料理にレモンを絞る、ほうれん草のおひたしに柑橘類を添えるなど、組み合わせを工夫することで、効率的に鉄分を体に取り込めます。

3.5.4 血糖値を安定させる食べ方

血糖値が急激に上下すると、自律神経に負担がかかります。食事の際には、野菜から先に食べ、次に肉や魚などのタンパク質、最後にご飯やパンといった炭水化物を食べる順番を意識することで、血糖値の急上昇を防げます。

また、白米よりも玄米や雑穀米、白いパンよりも全粒粉のパンを選ぶことで、血糖値の上昇が緩やかになります。食物繊維が豊富な食品は、消化吸収に時間がかかるため、血糖値が安定しやすくなります。

3.5.5 避けたほうが良い食品

カフェインを多く含む飲料は、一時的に症状を和らげることもありますが、過剰摂取は自律神経を乱し、睡眠の質を下げる原因になります。コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどは、午後以降は控えめにします。

砂糖を多く含む菓子類やジュースは、血糖値を急激に上げた後に急降下させるため、体への負担が大きくなります。間食をする場合は、ナッツ類やヨーグルト、果物など、栄養価が高く血糖値が安定しやすいものを選びます。

栄養素 主な働き 多く含まれる食品
ビタミンB群 神経機能の維持、エネルギー産生 豚肉、鶏肉、魚、卵、大豆製品、玄米
ビタミンC ストレス抵抗力の向上、自律神経調整 ブロッコリー、ピーマン、キウイ、いちご
カルシウム 神経の興奮抑制、リラックス効果 乳製品、小魚、小松菜、豆腐
マグネシウム 神経伝達の正常化、筋肉の緊張緩和 ナッツ類、海藻類、大豆製品、玄米
鉄分 酸素運搬、貧血予防 レバー、赤身肉、魚、ほうれん草、ひじき
タンパク質 体の組織形成、ホルモン生成 肉類、魚類、卵、大豆製品、乳製品
食物繊維 血糖値の安定化、腸内環境改善 野菜類、果物、海藻類、きのこ類

3.5.6 一日の食事例

具体的な食事の組み立て方として、朝食には卵料理とご飯、みそ汁、野菜のおひたしといった和食の定番メニューが理想的です。タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラルがバランス良く摂れます。パン食の場合は、全粒粉のパンにチーズや卵を合わせ、野菜サラダと果物を添えます。

昼食は、学校や仕事の都合で給食や弁当、外食になることも多いでしょう。その場合も、主食、主菜、副菜が揃っているメニューを選ぶことを意識します。丼ものや麺類だけで済ませるのではなく、野菜の小鉢や汁物を追加することで栄養バランスが整います。

夕食は、魚や肉などのタンパク質をしっかり摂り、野菜もたっぷりと食べます。煮物、炒め物、蒸し物など、調理法を変えることで飽きずに野菜を食べ続けられます。海藻類やきのこ類も積極的に取り入れ、ミネラルや食物繊維を補います。

間食が必要な時は、午後3時頃に軽く摂ります。ナッツとドライフルーツ、ヨーグルトと果物、チーズとクラッカーなど、栄養価の高いものを選びます。空腹のまま夕食まで我慢すると、夕食時に食べ過ぎてしまい、胃腸に負担をかける原因になります。

4. セルフケアで取り入れたいツボ押しとマッサージ

起立性調節障害の改善には、自律神経のバランスを整えることが欠かせません。ツボ押しやマッサージは、自宅で手軽に取り組めるセルフケアとして、多くの方が実践しています。特別な道具も必要なく、朝起きた時や就寝前、症状が辛い時など、タイミングを選ばずに行えるのが大きな利点です。

ツボ押しは東洋医学の考えに基づいた方法で、体の特定の点を刺激することで気の流れを整え、体調を改善する効果が期待できます。起立性調節障害で悩む方の中には、ツボ押しを日常的に取り入れることで、めまいや立ちくらみの頻度が減ったという声も少なくありません。

マッサージについても同様に、血液やリンパの流れを促進することで、自律神経の働きをサポートします。特に首や肩周りの緊張をほぐすことは、脳への血流改善にもつながり、起立性調節障害特有の症状緩和に役立ちます。

4.1 自律神経を整えるツボの位置

自律神経のバランスを整えるツボは、体のさまざまな部位に存在しています。ここでは、起立性調節障害の改善に特に有効とされるツボを、具体的な位置と押し方とともにご紹介します。毎日続けることで、症状の変化を実感できる可能性が高まります。

4.1.1 百会(ひゃくえ)

百会は頭のてっぺん、両耳を結んだ線と顔の中心線が交わる場所に位置します。このツボは自律神経全体のバランスを整える働きがあり、起立性調節障害による頭痛やめまいの緩和に効果的です。

押し方としては、両手の中指を重ねて百会に当て、頭の中心に向かってゆっくりと圧をかけます。息を吐きながら5秒ほど押し、息を吸いながら力を抜くという動作を5回程度繰り返します。朝起きた時に行うと、一日のスタートが楽になったという声も多く聞かれます。

4.1.2 神門(しんもん)

神門は手首の内側、小指側の付け根あたりにあるツボです。手首のしわと小指側の腱の間にある少しくぼんだ場所を探してください。このツボは心を落ち着かせ、不安や緊張からくる自律神経の乱れを整える効果が期待できます。

反対側の親指で神門を押さえ、円を描くようにゆっくりとマッサージします。痛気持ちいいと感じる強さで、30秒から1分程度続けます。両手それぞれに行いましょう。特に学校や仕事の前、緊張する場面の前に押すと、心が落ち着きやすくなります。

4.1.3 内関(ないかん)

内関は手首の内側、手首のしわから指3本分ほど肘側に上がった位置にあります。2本の腱の間に位置するこのツボは、吐き気や胃の不調を和らげるとともに、自律神経のバランス調整にも役立ちます。起立性調節障害では、朝起きた時の吐き気に悩まされる方も多いため、このツボを覚えておくと便利です。

親指をツボに当て、やや強めに押し込みます。押している間は深呼吸を続け、1回につき10秒程度を3セット行います。朝の症状が強い方は、起床後すぐに布団の中で行うことをお勧めします。

4.1.4 合谷(ごうこく)

合谷は手の甲側、親指と人差し指の骨が合流する場所の少し人差し指寄りにあるツボです。このツボは万能のツボとも呼ばれ、頭痛、肩こり、ストレスなど幅広い症状に対応します。血行促進効果も高く、起立性調節障害の根本的な原因である血圧調節機能の改善にもつながります。

反対側の親指と人差し指で挟むようにして、やや人差し指の骨に向かって押し込みます。痛みを感じる程度の強さで、5秒押して5秒休むを5回繰り返します。デスクワーク中や勉強中でも手軽に押せるため、こまめに刺激するとよいでしょう。

4.1.5 三陰交(さんいんこう)

三陰交は内くるぶしの一番高い部分から、指4本分ほど上に上がった位置で、骨の後ろ側にあります。このツボは血流改善とホルモンバランスの調整に優れており、特に思春期の女性の起立性調節障害に有効とされています。

親指をツボに当て、骨に向かって押し込むように刺激します。少し痛みを感じるくらいの強さで、ゆっくりと円を描きながら1分程度マッサージします。両足それぞれに行いましょう。就寝前に行うと、睡眠の質が向上したという報告もあります。

4.1.6 足三里(あしさんり)

足三里は膝のお皿の外側下端から、指4本分ほど下がった位置にあります。すねの骨の外側、筋肉の盛り上がった部分を探してください。このツボは胃腸の働きを整え、全身の疲労回復と体力増強に効果があるとされ、起立性調節障害で慢性的な疲労感に悩む方に適しています

両手の親指を重ねてツボに当て、すねの骨に向かって押し込みます。じんわりと響くような感覚があれば正しい位置です。1回につき5秒押して3秒休むを、10回程度繰り返します。朝と夕方の2回行うことで、日中の活動量を増やせる可能性が高まります。

4.1.7 ツボ押しを行う際の注意点

ツボ押しは体調を整える有効な方法ですが、いくつか注意すべき点があります。まず、食後すぐは避けてください。消化の妨げになる可能性があります。また、飲酒後や発熱時も控えましょう。

押す強さについては、痛気持ちいいと感じる程度が目安です。あまり強く押しすぎると、かえって筋肉が緊張してしまいます。呼吸を止めずに、息を吐きながら押すことで、リラックス効果も高まります。

継続することが何より大切です。一度試しただけで劇的な変化を期待するのではなく、毎日の習慣として取り入れることで、徐々に体質が変わっていきます。少なくとも2週間から1か月は続けてみてください。

ツボの名称 位置 主な効果 押し方のポイント
百会 頭頂部の中心 自律神経調整、頭痛・めまい緩和 中指で頭の中心に向けて押す
神門 手首内側、小指側の付け根 精神安定、不安の軽減 円を描くようにマッサージ
内関 手首内側から指3本分肘側 吐き気の緩和、自律神経調整 やや強めに押し込む
合谷 手の甲、親指と人差し指の間 頭痛、肩こり、血行促進 挟むようにして刺激
三陰交 内くるぶしから指4本分上 血流改善、ホルモンバランス調整 骨に向かって押し込む
足三里 膝外側下から指4本分下 疲労回復、体力増強 すねの骨に向かって押す

4.2 血流改善のための簡単マッサージ

起立性調節障害の症状を改善するには、血流を促進することが重要です。特に下半身から上半身への血液循環がスムーズでないことが、立ちくらみやめまいの原因となります。ここでは自宅で簡単にできる、血流改善に効果的なマッサージ方法をご紹介します。

マッサージは入浴後の体が温まっている時に行うと、より効果が高まります。ただし、朝起きた時や日中に症状が出た時にも、衣服の上からでも構いませんので、気づいた時に行う習慣をつけることが大切です。

4.2.1 ふくらはぎのマッサージ

ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれるほど、血液を心臓に戻すポンプ機能を担っています。このポンプ機能が弱まると、下半身に血液が溜まりやすくなり、起立性調節障害の症状が悪化します。ふくらはぎのマッサージは、下半身の血流を改善し、立った時の血圧低下を防ぐ効果が期待できます。

座った状態で片足を反対の太ももに乗せ、両手でふくらはぎを包み込みます。足首から膝に向かって、やや強めの圧をかけながらゆっくりと撫で上げます。これを片足につき10回程度繰り返します。

次に、親指をふくらはぎの内側に当て、残りの指で外側を支えながら、筋肉を揉みほぐします。固くなっている部分は特に念入りに、円を描くようにマッサージしてください。痛みを感じる場合は、力を弱めて徐々に慣らしていきましょう。

朝起きた時にベッドの上で行うと、起立時の立ちくらみを軽減できます。また、長時間座っている時も定期的にふくらはぎをマッサージすることで、血流の停滞を防げます。

4.2.2 太もものマッサージ

太ももの大きな筋肉も、血液循環において重要な役割を果たします。座りっぱなしの生活が続くと、太ももの筋肉が固くなり、血流が滞りやすくなります。太もものマッサージで筋肉をほぐすことで、下半身全体の血流が改善されます。

座った状態で、両手を太ももの上に置き、膝から太ももの付け根に向かって、手のひら全体で撫で上げます。外側、真ん中、内側と3つのラインに分けて、それぞれ10回ずつ行います。

続いて、太ももの筋肉を両手で掴み、揉みほぐします。特に外側の筋肉は固くなりやすいため、しっかりとマッサージしてください。奥の筋肉まで届くように、やや強めの圧で揉むのがポイントです。

太ももの付け根部分には大きなリンパ節があるため、この部分を優しくマッサージすることで、老廃物の排出も促進されます。付け根を円を描くように、10回程度マッサージしましょう。

4.2.3 首と肩のマッサージ

首や肩の筋肉が緊張していると、脳への血流が制限され、起立性調節障害の症状が強く出やすくなります。特に頭痛やめまいがある方は、首と肩のマッサージを重点的に行うことをお勧めします。

まず、首の後ろに両手を当て、髪の生え際から肩に向かって、指の腹で優しく撫で下ろします。首の筋肉は繊細なため、強い力は加えず、温めるような感覚でマッサージしてください。左右それぞれ10回程度行います。

次に、首の横側を親指と残りの指で挟むようにして、上から下へゆっくりとマッサージします。首を軽く反対側に傾けると、筋肉が伸びてマッサージしやすくなります。

肩については、反対側の手で肩の筋肉を掴み、揉みほぐします。肩甲骨の上部から首の付け根にかけて、固くなっている部分を重点的にほぐすことで、頭部への血流が改善されます。肩を回しながら行うと、より効果的です。

4.2.4 頭皮マッサージ

頭皮の血流を促進することは、脳への酸素供給を増やし、頭痛やめまいの軽減につながります。頭皮マッサージは気分転換にもなるため、勉強や仕事の合間に取り入れると、集中力の回復にも役立ちます。

両手の指を広げて頭皮に当て、指の腹で頭皮を動かすように円を描きます。爪を立てずに、頭皮全体を万遍なくマッサージしてください。前髪の生え際から後頭部に向かって、少しずつ位置を変えながら行います。

特に耳の上あたりは、側頭筋という筋肉があり、緊張しやすい場所です。この部分を重点的にマッサージすることで、頭全体の緊張がほぐれます。こめかみあたりも、円を描くように優しくマッサージしましょう。

頭皮マッサージは、シャンプーの際に行うのも効果的です。泡立てた状態で頭皮を動かすように洗うことで、清潔に保ちながら血流も促進できます。

4.2.5 手足の末端マッサージ

手足の末端は血流が滞りやすく、冷えやすい部分です。起立性調節障害では末端の冷えを訴える方も多く、全身の血流改善のためには手足のマッサージも欠かせません。

手のマッサージは、反対の手で指を1本ずつ、付け根から先端に向かってゆっくりと引っ張るように行います。各指を回したり、軽く引っ張ったりして、関節をほぐします。手のひら全体も、親指で円を描くようにマッサージしてください。

足のマッサージでは、まず足の指を1本ずつ回します。足の指は普段あまり動かさないため、関節が固くなっています。ゆっくりと丁寧に回すことで、血流が促進されます。

足の裏も重要です。土踏まずを中心に、親指でしっかりと押し込むようにマッサージします。足裏には多くの反射区があり、全身の臓器とつながっているとされています。痛みを感じる部分は、対応する臓器に不調がある可能性があるため、優しくほぐしてください。

4.2.6 腹部のマッサージ

腹部には大きな血管が通っており、内臓の血流も集中しています。腹部をマッサージすることで、全身の血液循環が整い、自律神経のバランスも改善されます。また、便秘の解消にもつながるため、起立性調節障害に伴う消化器症状の緩和も期待できます。

仰向けに寝て、両手を重ねてお腹の上に置きます。おへそを中心に、時計回りにゆっくりと円を描くようにマッサージします。力は入れすぎず、お腹が心地よく温まる程度の強さで行ってください。

特におへその周りは、腸の動きを活発にする効果があるため、便秘や腹痛がある場合は重点的にマッサージすることで症状が和らぐことがあります。朝起きた時や就寝前に行うと、腸の動きが整いやすくなります。

4.2.7 全身の血流を促すリンパマッサージ

リンパの流れを促進することは、老廃物の排出と血液循環の改善につながります。リンパは血液とは異なり、筋肉の動きによって流れるため、マッサージで積極的に流してあげることが重要です。

鎖骨の下には大きなリンパ節があり、ここに老廃物が集まります。鎖骨の下を、中心から外側に向かって優しくさすります。強く押す必要はありません。軽く撫でる程度で十分です。

脇の下にもリンパ節があるため、腕を上げた状態で脇の下を優しく押します。痛みがある場合は、リンパが滞っている証拠です。毎日続けることで、徐々に痛みが和らぎます。

膝の裏にもリンパ節があります。膝を曲げた状態で、膝裏を両手の指で優しく押します。ここも滞りやすい場所なので、こまめにマッサージすることをお勧めします。

4.2.8 マッサージを行う際の基本的なルール

マッサージの効果を最大限に引き出すためには、いくつかの基本的なルールを守ることが大切です。まず、マッサージは血流の方向に沿って行います。基本的には、末端から心臓に向かって流すように行うことで、血液やリンパの流れを促進できます。

力加減については、痛気持ちいいと感じる程度が理想です。痛みを我慢してまで強く押す必要はありません。筋肉が緊張してしまい、かえって逆効果になることもあります。

マッサージの時間は、1か所につき1分から3分程度が目安です。長時間同じ場所をマッサージし続けると、筋肉や皮膚を傷めてしまう可能性があります。全身のマッサージでも、15分から20分程度に収めるのが適切です。

呼吸を止めないことも重要です。マッサージ中は深くゆっくりとした呼吸を続けることで、リラックス効果が高まり、自律神経のバランスも整いやすくなります。

マッサージ部位 効果 方法 実施のタイミング
ふくらはぎ 下半身の血流促進、立ちくらみ予防 足首から膝に向かって撫で上げる 朝起きた時、長時間座った後
太もも 下半身の血液循環改善 膝から付け根に向かって撫で上げる 座り仕事の合間
首と肩 脳への血流改善、頭痛緩和 首から肩に向かって撫で下ろす 頭痛やめまいを感じた時
頭皮 脳への酸素供給、気分転換 頭皮全体を円を描くように動かす 勉強や仕事の合間
手足の末端 末端冷え改善、全身の血流促進 指を1本ずつ付け根から先端へ 冷えを感じた時
腹部 内臓の血流改善、便秘解消 おへそ中心に時計回りに円を描く 朝起きた時、就寝前

4.2.9 マッサージの効果を高める工夫

マッサージの効果をさらに高めるには、いくつかの工夫があります。まず、マッサージ前に軽くストレッチを行うことで、筋肉がほぐれやすくなります。特に固さを感じる部分は、ストレッチで伸ばしてからマッサージすると効果的です。

入浴後の体が温まっている時にマッサージを行うと、血管が拡張しているため、より血流が促進されます。湯船にゆっくり浸かって体を温めた後、15分以内にマッサージを始めるのが理想的です。

マッサージ中に深呼吸を意識することも大切です。鼻からゆっくりと息を吸い、口からゆっくりと吐く腹式呼吸を行うことで、副交感神経が優位になり、リラックス効果が高まります。

就寝前にマッサージを行う場合は、照明を少し暗めにし、リラックスできる環境を整えます。好きな音楽を小さな音量でかけたり、アロマの香りを楽しんだりすることで、心身ともにリラックスでき、睡眠の質も向上します。

水分補給も忘れずに行いましょう。マッサージ後は血流が良くなり、老廃物が排出されやすい状態になっています。常温の水や白湯を飲むことで、デトックス効果が高まります。

4.2.10 家族に手伝ってもらうマッサージ

自分でマッサージを行うのが難しい部分、特に背中や肩甲骨周りは、家族に手伝ってもらうとより効果的です。家族とのコミュニケーションの機会にもなるため、一石二鳥といえます。

背中のマッサージでは、うつ伏せに寝た状態で、背骨の両側を上から下に向かって手のひらで撫で下ろしてもらいます。背骨を直接押すのは避け、背骨の両側にある筋肉を優しくほぐしてもらいましょう。

肩甲骨周りは、自律神経の働きと深く関係している部分です。肩甲骨の内側を親指で押してもらうと、固くなった筋肉がほぐれ、呼吸が深くなり、自律神経のバランスが整いやすくなります

腰のマッサージも効果的です。腰には大きな筋肉があり、ここが緊張していると全身の血流に影響します。腰の左右を手のひら全体で円を描くようにマッサージしてもらうと、下半身への血流が改善されます。

手伝ってもらう際は、力加減や気持ちよさを伝えながら行うことが大切です。コミュニケーションを取りながらマッサージすることで、家族の理解も深まり、起立性調節障害への取り組みを支えてもらいやすくなります。

4.2.11 症状別のマッサージの組み合わせ

起立性調節障害の症状は人によって異なるため、自分の症状に合わせてマッサージの組み合わせを調整することが効果的です。ここでは、代表的な症状別に適したマッサージをご紹介します。

朝起きられない、立ちくらみが強い場合は、ふくらはぎと太もものマッサージを重点的に行います。起床前にベッドの上で下半身をマッサージすることで、起立時の血圧低下を防げます。朝のルーティンとして組み込むことで、症状の軽減につながります。

頭痛やめまいが主な症状の場合は、首、肩、頭皮のマッサージが効果的です。これらの部位をこまめにマッサージすることで、脳への血流が改善され、症状が和らぎます。デスクワークや勉強中にも、短時間で行えるため取り入れやすいでしょう。

倦怠感や疲労感が強い場合は、全身のリンパマッサージと腹部のマッサージを組み合わせます。老廃物を排出し、内臓の働きを整えることで、体の回復力が高まります。就寝前に行うことで、睡眠の質も向上し、翌朝の体調が整いやすくなります。

動悸や息切れがある場合は、胸の周りと背中のマッサージが有効です。胸の筋肉をほぐすことで呼吸が楽になり、背中の筋肉を緩めることで自律神経のバランスが整います。呼吸を深くすることを意識しながら行うと、より効果が高まります。

これらのマッサージを毎日継続することで、起立性調節障害の症状は徐々に改善していきます。即効性を求めるのではなく、体質を変えていくという長期的な視点で取り組むことが、確実な改善への道となります。

5. 整体による起立性調節障害の治し方

セルフケアに加えて整体を活用することで、起立性調節障害の改善をより効果的に進めることができます。整体は身体の構造的なバランスを整え、自律神経の働きを正常化させるアプローチとして、多くの方に取り入れられています。ここでは整体がどのように起立性調節障害に働きかけるのか、具体的にどのような症状の改善が期待できるのかを詳しく見ていきます。

5.1 整体が起立性調節障害に効果的な理由

整体が起立性調節障害に対して効果を発揮する理由は、身体全体のバランスを整えることで自律神経の働きを正常化させる点にあります。起立性調節障害は自律神経の乱れによって引き起こされる症状ですが、その自律神経は背骨を通る神経系と密接に関連しています。

5.1.1 背骨と自律神経の深い関係

背骨には自律神経が通っており、背骨の歪みや筋肉の緊張によって神経の働きが妨げられることがあります。整体では背骨の配列を整えることで、神経の通り道をスムーズにし、自律神経が本来の機能を取り戻すサポートをします。特に頸椎から胸椎にかけての部分は、交感神経と副交感神経のバランスに大きく影響するため、この部分へのアプローチは重要です。

姿勢の悪さや長時間の同じ姿勢によって背骨周辺の筋肉が硬くなると、血液循環が悪化し、自律神経の働きにも悪影響を及ぼします。整体による施術でこれらの筋肉の緊張をほぐし、背骨を正しい位置に導くことで、神経の伝達がスムーズになり、起立時の血圧調節機能も回復しやすくなります。

5.1.2 血液循環の改善による効果

起立性調節障害では、立ち上がった際に脳への血流が不足することが主な問題です。整体では全身の筋肉や関節にアプローチすることで、血液やリンパの流れを促進し、身体の隅々まで酸素や栄養が行き渡りやすい状態を作ります。

特に下半身の血液循環が滞ると、立ち上がった際に血液が下肢に溜まりやすくなり、脳への血流不足を招きます。整体による骨盤調整や下肢への施術は、血液が心臓へ戻る力を高め、起立時のめまいやふらつきの軽減につながります。また、首や肩周辺の筋肉をほぐすことで、脳への血流も改善され、頭痛や集中力の低下といった症状にも良い影響を与えます。

5.1.3 筋肉の緊張緩和とリラックス効果

起立性調節障害を抱える方の多くは、身体の緊張が強く、常に力が入った状態になっています。これは交感神経が優位になりすぎている状態であり、リラックスする力が低下しています。整体による施術は、筋肉の深部にある緊張をゆっくりとほぐし、副交感神経を優位にする働きがあります。

施術を受けることで身体がリラックスすると、呼吸が深くなり、内臓の働きも活発になります。これにより消化吸収が改善され、栄養状態も良くなるという好循環が生まれます。また、身体の緊張が取れることで睡眠の質も向上し、朝の起きづらさの改善にもつながります。

5.1.4 骨盤の歪み調整が与える影響

骨盤は身体の土台となる部分であり、ここが歪むと全身のバランスが崩れてしまいます。骨盤の歪みは背骨の歪みにもつながり、結果として自律神経の働きにも悪影響を及ぼします。整体では骨盤の位置を丁寧に調整することで、身体全体の軸を整え、立位時の安定性を高めることができます。

特に思春期の成長期には骨盤の形状が変化しやすく、歪みが生じやすい時期でもあります。この時期に適切な骨盤調整を受けることで、起立性調節障害の症状を予防したり、軽減したりすることが期待できます。骨盤が整うと下半身の筋肉もバランス良く使えるようになり、立ち上がる際の身体の負担も軽減されます。

5.1.5 内臓機能への間接的なアプローチ

整体は筋骨格系だけでなく、内臓の働きにも間接的に影響を与えます。背骨や骨盤の位置が整うことで、内臓が本来あるべき位置に収まりやすくなり、その機能も向上します。特に消化器系の働きが改善されると、栄養の吸収が良くなり、身体全体のエネルギー生産能力が高まります。

また、横隔膜の動きが良くなることで呼吸が深くなり、酸素の取り込み量が増えます。これにより脳への酸素供給も改善され、頭がスッキリとした状態を保ちやすくなります。内臓の働きが整うことで自律神経のバランスも取れやすくなり、起立性調節障害の根本的な改善につながります。

5.1.6 継続的な施術による身体の変化

整体による効果は一度の施術で劇的に現れるものではなく、継続的に受けることで徐々に身体が変化していきます。最初のうちは週に一度程度の頻度で通い、身体の状態が安定してきたら間隔を空けていくという方法が一般的です。

継続して施術を受けることで、身体は正しい状態を記憶していきます。筋肉の緊張パターンが変わり、背骨の配列が安定し、自律神経の働きも正常化していきます。この過程で、起立性調節障害の症状が徐々に軽減され、日常生活での支障が少なくなっていくことを実感できるでしょう。

5.2 整体で改善が期待できる症状

整体によるアプローチは、起立性調節障害に伴う様々な症状の改善に効果が期待できます。ここでは具体的にどのような症状に対して効果があるのかを詳しく見ていきます。

5.2.1 立ちくらみとめまいの軽減

起立性調節障害で最も多く見られる症状が、立ち上がった際の立ちくらみやめまいです。整体では、首や背中の筋肉をほぐし、血液循環を改善することで、脳への血流を安定させる効果があります。特に頸部の筋肉が硬くなっていると、脳への血流が妨げられやすくなるため、この部分へのアプローチは重要です。

また、骨盤や下肢への施術によって、下半身に溜まりがちな血液が心臓へ戻りやすくなります。これにより立ち上がった際の血圧低下を防ぎ、立ちくらみやめまいの頻度が減少していきます。施術を重ねるごとに、身体が立位姿勢に適応しやすくなり、症状の出現が少なくなっていくことが期待できます。

5.2.2 朝の起きづらさの改善

起立性調節障害を抱える方の多くが、朝起きられないという悩みを持っています。これは睡眠中の自律神経の働きが不安定で、朝になっても交感神経がうまく働かないことが原因の一つです。整体による施術で全身の緊張がほぐれると、夜間の副交感神経の働きが高まり、深い睡眠が得られやすくなります

睡眠の質が向上することで、朝目覚めた際の身体の回復度が高まり、起き上がるための準備が整いやすくなります。また、背骨や骨盤の位置が整うことで、寝返りも打ちやすくなり、睡眠中の身体の負担も軽減されます。結果として朝の目覚めがスムーズになり、午前中の活動性も向上していきます。

5.2.3 頭痛や頭重感の緩和

起立性調節障害では、慢性的な頭痛や頭が重い感じに悩まされることがあります。これは脳への血流不足や、首や肩の筋肉の緊張が原因となっていることが多いです。整体では首から肩にかけての筋肉を丁寧にほぐし、頭部への血流を改善することで、頭痛や頭重感を和らげる効果が期待できます。

特に後頭部から首にかけての筋肉は、長時間のスマートフォンやパソコンの使用によって硬くなりやすく、頭痛の原因となります。この部分への施術により、筋肉の柔軟性が回復し、頭部への神経伝達もスムーズになります。継続的な施術を受けることで、頭痛の頻度や強さが徐々に減少していくことを実感できるでしょう。

5.2.4 倦怠感と疲労感の軽減

常に身体がだるく、疲れが取れないという症状も、起立性調節障害の特徴です。この倦怠感は、自律神経のバランスが崩れ、身体の回復力が低下していることが原因です。整体による全身の調整を受けることで、血液循環が改善され、老廃物の排出が促進されます

また、筋肉の緊張が取れることで、日常生活での身体の使い方が効率的になり、無駄なエネルギー消費が減少します。内臓の働きも活性化されるため、栄養の吸収や代謝も向上し、身体全体のエネルギーレベルが上がっていきます。施術後は身体が軽く感じられ、活動的に過ごせる時間が増えていくことが期待できます。

5.2.5 動悸や息切れの改善

起立性調節障害では、ちょっとした動作で動悸がしたり、息が切れたりすることがあります。これは心臓や呼吸器の機能そのものに問題があるわけではなく、自律神経の調節機能が乱れていることが主な原因です。整体では胸椎や肋骨周辺の筋肉を調整することで、呼吸がしやすい身体の状態を作り、心臓への負担も軽減します。

背中が丸まった姿勢では胸郭が狭くなり、呼吸が浅くなってしまいます。整体によって姿勢が改善されると、肺が広がりやすくなり、一回の呼吸で取り込める酸素の量が増えます。これにより心臓への負担が減り、動悸や息切れの症状も軽減されていきます。

5.2.6 消化器症状の改善

起立性調節障害では、腹痛や吐き気、食欲不振などの消化器症状を伴うことがあります。これは自律神経が消化器系の働きもコントロールしているためです。整体による背骨や骨盤の調整は、内臓の位置を整え、消化器系の神経伝達を改善する効果があります。

特に背中の中部から下部にかけての筋肉の緊張をほぐすことで、胃腸への神経の働きが正常化します。また、横隔膜の動きが良くなることで、内臓のマッサージ効果も得られ、消化吸収の機能が向上します。食事が美味しく感じられるようになり、栄養状態も改善されることで、全体的な体調の向上につながります。

5.2.7 集中力と記憶力の向上

脳への血流が不安定な状態では、集中力が続かなかったり、物事を覚えにくくなったりします。整体によって全身の血液循環が改善されると、脳への酸素供給が安定し、思考がクリアになる効果が期待できます。

首や肩の筋肉の緊張が取れることで、脳へ向かう血管の圧迫も解消され、十分な血液が脳に届くようになります。これにより学習効率が上がり、学校や仕事でのパフォーマンスも向上していきます。継続的な施術を受けることで、午後になっても集中力を保ちやすくなり、一日を通して活動できる時間が増えていきます。

5.2.8 睡眠の質の向上

起立性調節障害では、夜なかなか眠れなかったり、眠りが浅くて何度も目が覚めたりすることがあります。これは交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないためです。整体による施術で身体全体の緊張がほぐれると、夜間に副交感神経が優位になりやすく、深い眠りに入りやすくなります

特に就寝前の時間帯に身体がリラックスできる状態を作ることが重要です。整体を定期的に受けることで、身体がリラックスする感覚を覚え、自然と睡眠の質が向上していきます。深い睡眠が得られるようになると、成長ホルモンの分泌も正常化し、身体の回復力が高まります。

5.2.9 気分の落ち込みや不安感の軽減

起立性調節障害が長引くと、気分が落ち込んだり、将来への不安を感じたりすることがあります。身体の不調は精神面にも大きく影響し、逆に精神面の不安定さは身体症状を悪化させます。整体による施術は、身体を整えることで心の状態も安定させる効果があります。

施術によって血液循環が改善されると、脳内の神経伝達物質のバランスも整いやすくなります。また、身体の緊張が取れることで気持ちもリラックスし、前向きな気持ちを保ちやすくなります。身体の調子が良くなることで自信も回復し、社会生活への復帰への意欲も湧いてきます。

症状 整体による主なアプローチ 期待される効果
立ちくらみ・めまい 頸部の筋肉調整、骨盤調整、下肢への施術 脳への血流安定、血圧調節機能の向上
朝の起きづらさ 全身の緊張緩和、背骨の調整 睡眠の質向上、目覚めのスムーズ化
頭痛・頭重感 首から肩の筋肉調整、頭部への血流改善 頭痛頻度の減少、頭部の軽快感
倦怠感・疲労感 全身の血液循環改善、内臓機能活性化 エネルギーレベルの向上、活動性の改善
動悸・息切れ 胸椎・肋骨周辺の調整、姿勢改善 呼吸の深まり、心臓への負担軽減
消化器症状 背骨調整、内臓位置の正常化 消化機能の向上、食欲の回復
集中力低下 脳への血流改善、首・肩の調整 思考のクリア化、学習効率の向上
睡眠障害 全身の緊張緩和、自律神経調整 入眠の改善、深い睡眠の獲得

5.2.10 整体を受ける際のポイント

整体の効果を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。まず、自分の身体の状態や症状をしっかりと伝えることが重要です。いつから症状が出ているのか、どのような時に症状が強くなるのか、日常生活でどんな困りごとがあるのかなど、詳しく伝えることで、より適切な施術を受けることができます。

また、施術後は十分な水分を摂取し、身体をゆっくり休ませることが推奨されます。整体によって血液循環が改善されると、老廃物の排出が促進されるため、水分補給が重要になります。施術当日は激しい運動を避け、ゆったりと過ごすことで、身体の変化を定着させやすくなります。

施術の頻度については、最初のうちは週に一度程度が目安ですが、症状の程度や身体の状態によって異なります。身体の変化を感じながら、適切な間隔を見つけていくことが大切です。症状が改善してきたら徐々に間隔を空けていき、メンテナンスとして月に一度程度通うという方法もあります。

5.2.11 セルフケアとの組み合わせ

整体の効果を持続させ、さらに高めるためには、日常生活でのセルフケアとの組み合わせが欠かせません。整体で身体が整った状態を、日々のセルフケアで維持していくことが、起立性調節障害の根本的な改善につながります。

施術で教わったストレッチや姿勢の保ち方を日常生活に取り入れることで、整体の効果が長続きし、次の施術までの期間も良い状態を保ちやすくなります。特に朝起きた時や長時間同じ姿勢を続けた後は、簡単なストレッチを行うことで、筋肉の緊張を防ぐことができます。

また、整体で身体のバランスが整うことで、どのような動作や姿勢が自分の身体に負担をかけているのかに気づきやすくなります。この気づきを活かして、日常生活での身体の使い方を改善していくことが、症状の再発を防ぐ上で重要です。

5.2.12 家族の理解とサポート

整体に通う際は、家族の理解とサポートも大切です。起立性調節障害は外見からは分かりにくい症状のため、周囲に理解されにくいことがあります。整体に通うことで症状が改善していくプロセスを家族と共有し、協力して取り組む姿勢を持つことで、心理的な負担も軽減されます

特に通院の送迎や、施術後の休息時間の確保など、具体的なサポートをお願いすることも大切です。家族が症状や改善方法について理解を深めることで、日常生活での配慮も得られやすくなり、回復への道のりがスムーズになります。

5.2.13 改善までの期間と心構え

整体による起立性調節障害の改善は、個人差が大きく、すぐに効果を実感できる場合もあれば、時間がかかる場合もあります。一般的には数週間から数ヶ月の継続的な施術によって、徐々に変化が現れてきます。焦らず、自分の身体の小さな変化に気づきながら、コツコツと続けていく姿勢が大切です。

症状には波があり、良くなったと思ったら再び悪化することもあります。これは身体が変化していく過程で起こる自然な反応であり、決して悪化しているわけではありません。長期的な視点を持ち、一進一退を繰り返しながらも全体として改善の方向に向かっていることを信じて、取り組み続けることが重要です。

また、整体だけに頼るのではなく、生活習慣の改善や適度な運動、栄養バランスの取れた食事など、総合的なアプローチを心がけることで、より確実な改善が期待できます。整体は身体を整える手段の一つとして活用しながら、自分自身でできることも並行して行っていく姿勢が、起立性調節障害を克服するための鍵となります。

6. 改善を加速させる日常生活の工夫

起立性調節障害は、セルフケアや整体での施術と並行して、日常生活における細やかな工夫を重ねることで、改善のスピードが大きく変わってきます。症状があるからといって生活のすべてを制限する必要はありませんが、無理をせず、自分の体調と向き合いながら過ごすことが何より大切です。この章では、学校や仕事といった社会生活の場面での具体的な対応方法、周囲に症状を理解してもらうためのコミュニケーションの取り方、そして自分のペースを守りながら活動を続けるための計画の立て方について詳しく解説していきます。

6.1 学校や仕事での対応方法

起立性調節障害を抱えながら学校や仕事に通うことは、本人にとって大きな負担となることがあります。特に朝の時間帯に症状が強く出やすいため、通常の生活リズムに合わせることが難しい場合も少なくありません。しかし、適切な対応を取ることで、無理なく社会生活を続けることが可能になります。

6.1.1 登校・出勤時の工夫

朝起きてから活動を開始するまでの時間配分を見直すことが最初の一歩です。起床時刻を通常より30分から1時間早めに設定し、ゆっくりと体を慣らす時間を確保することで、急激な血圧変動を避けることができます。目覚めてすぐに起き上がるのではなく、布団の中で手足を動かしたり、上半身だけを起こして座位で数分過ごしたりすることで、血液循環を徐々に活発にしていきます。

朝食は必ず摂るようにしましょう。時間がない場合でも、おにぎりやパン、バナナなど手軽に食べられるものを用意しておくと便利です。温かい味噌汁やスープを飲むことで、体温が上がり血流も改善されます。水分補給も忘れずに行い、コップ1杯から2杯程度の水や麦茶を飲むことをおすすめします。

通学・通勤時には、可能であれば座席に座れる時間帯を選ぶか、各駅停車を利用するなどの配慮をします。満員電車では症状が悪化しやすいため、時差通学・時差出勤が認められる場合は積極的に活用しましょう。立っている時間が長い場合は、かかとの上げ下げ運動やふくらはぎに力を入れる動作を繰り返すことで、下半身に溜まった血液を心臓に戻す手助けができます。

6.1.2 学校生活での具体的な対応

教室での座席位置について、担任の先生に相談してみることも有効です。出入り口に近い席や、窓側で換気がしやすい席を選ぶことで、体調が悪くなった時にすぐ対応できる環境を整えられます。体育の授業については、見学や別メニューの実施など、無理のない範囲での参加方法を検討してもらいます。

授業中に症状が出た場合の対処法をあらかじめ決めておくと安心です。頭痛やめまいを感じたら、我慢せずに手を挙げて保健室に行く許可をもらいましょう。保健室では横になって休むだけでなく、足を少し高くして寝ることで血液が頭部に戻りやすくなり、症状が和らぐことがあります

場面 工夫のポイント 具体的な方法
朝礼や集会 長時間の立位を避ける 椅子に座らせてもらう、最後列で壁にもたれる、膝を軽く曲げて立つ
授業中 集中力を維持する環境作り 適度な水分補給、換気の良い席、休憩を入れる許可
部活動 活動量の調整 見学や軽めの練習参加、休憩を多めに取る、顧問への事前相談
試験期間 体調管理を優先 別室受験の相談、時間延長の検討、試験日程の調整

6.1.3 仕事環境での調整方法

職場では、上司や人事担当者に症状について説明し、必要な配慮を求めることが重要です。フレックスタイム制度が利用できる場合は、体調が安定しやすい時間帯に出勤時刻を調整します。在宅勤務が可能な業務については、週に何日かリモートワークを取り入れることで、通勤の負担を軽減できます。

デスクワークの場合、長時間同じ姿勢でいることは血流を悪化させます。1時間に1回程度は席を立ち、軽いストレッチや歩行を行いましょう。トイレ休憩を兼ねて動く、給湯室で水分補給をするなど、自然な形で体を動かす機会を作ります。

会議や打ち合わせが長引く場合は、事前に状況を伝えておき、途中で席を外す可能性があることを了承してもらいます。立ちっぱなしのミーティングは避け、椅子に座れる環境を確保することも大切です。

6.1.4 昼休みの過ごし方

昼食後は血糖値の変動や消化活動によって、一時的に症状が現れやすくなることがあります。食事の量を腹八分目に抑え、よく噛んでゆっくり食べることを心がけます。食後すぐに活動を再開するのではなく、10分から15分程度は静かに過ごす時間を取りましょう。

可能であれば、昼休みに短時間の仮眠を取ることも効果的です。15分から20分程度の仮眠は、午後の活動に向けて体力を回復させ、集中力を高めます。横になれない場合でも、机に伏せて目を閉じるだけでも休息になります。

6.2 周囲の理解を得るためのコミュニケーション

起立性調節障害は外見からは分かりにくい症状であるため、周囲から「怠けている」「気持ちの問題だ」と誤解されることが少なくありません。適切なコミュニケーションを通じて正しい理解を得ることは、精神的な負担を軽減し、症状改善にもつながります。

6.2.1 症状の説明の仕方

起立性調節障害について説明する際は、具体的な症状と日常生活への影響を分かりやすく伝えることが大切です。「朝が弱い」という曖昧な表現ではなく、「起き上がると立ちくらみがして、そのまま倒れそうになる」「午前中は頭痛がひどく、集中することが難しい」など、具体的な状態を言葉にします。

自律神経の働きに関わる症状であることを説明し、「血圧の調節がうまくいかず、脳への血流が一時的に不足する状態」と伝えると理解されやすくなります。本人の意思や気持ちとは関係なく体に起こる反応であり、努力不足や怠けではないことを明確にしましょう。

6.2.2 家族とのコミュニケーション

最も身近な存在である家族の理解とサポートは、回復への大きな力となります。家族に対しては、日々の体調の変化を率直に伝え、辛い時には無理をせず休ませてほしいと具体的に要望を出します。同時に、できることは自分でやる姿勢も見せることで、甘えているわけではないことが伝わります。

家族が過度に心配しすぎることも、本人にとってはプレッシャーになることがあります。「今日は調子が良い」「少しずつ動ける時間が増えている」など、前向きな変化も共有することで、家族の不安を和らげることができます。一緒にセルフケアの方法を学んだり、食事の工夫を考えたりと、協力して改善に取り組む姿勢を作ることが理想的です。

6.2.3 友人関係での配慮のお願い

学校の友人や職場の同僚に対しては、すべてを詳しく説明する必要はありませんが、信頼できる人には状況を伝えておくと安心です。「体調によって急に休むことがあるかもしれない」「午前中は動きが鈍いことがある」など、日常的に影響が出やすい場面について触れておきます。

友人からの誘いを断らざるを得ない時には、理由をきちんと説明し、誘ってくれたことへの感謝の気持ちも伝えます。「今日は体調が良くないから難しいけれど、また誘ってほしい」と次の機会を示唆することで、関係性を維持することができます。

相手 伝えるべきポイント コミュニケーションの工夫
家族 日々の体調の詳細、必要なサポート 定期的な報告、前向きな変化の共有、感謝の言葉
先生・上司 症状の概要、業務や学習への影響 事前の相談、定期的な状況報告、改善への努力の提示
友人・同僚 基本的な状況、日常で配慮してほしいこと 自然な会話の中で説明、無理のない範囲での交流
クラスメート 簡単な症状の説明、誤解を避ける情報 必要に応じて説明、できることは積極的に参加

6.2.4 誤解を避けるための伝え方

症状を説明する際に避けたい表現もあります。「たぶん大丈夫」「気分次第で」といった曖昧な言い方は、かえって信頼性を損なう可能性があります。分からないことは分からないと正直に伝え、現時点での状況を明確に説明することが大切です。

また、症状を大げさに伝えすぎることも避けましょう。実際の状態を淡々と説明し、必要な配慮だけを具体的に求める姿勢が、周囲の理解を得やすくします。「できないこと」だけでなく「できること」も合わせて伝えることで、バランスの取れた理解につながります。

6.2.5 理解されにくい場面への対処

どれだけ丁寧に説明しても、すぐには理解が得られないこともあります。そのような時は、焦らず時間をかけて理解を深めてもらうという長期的な視点を持つことが重要です。実際の行動や回復の経過を見てもらうことで、徐々に信頼が築かれていきます。

場合によっては、起立性調節障害について説明している資料やパンフレットを渡すことも一つの方法です。第三者からの情報として受け取ることで、客観的に症状を理解してもらえることがあります。

6.3 無理をしない活動計画の立て方

起立性調節障害を改善していくためには、休息と活動のバランスを適切に保つことが不可欠です。無理をして症状を悪化させるのではなく、自分のペースを守りながら少しずつ活動範囲を広げていく計画的なアプローチが求められます。

6.3.1 体調の波を把握する

まず自分の体調の変化パターンを理解することから始めます。1日の中でどの時間帯に症状が強く出やすいのか、どのような活動の後に疲れが出るのかを記録していきましょう。手帳やスマートフォンのメモ機能を使って、起床時刻、症状の程度、行った活動、食事内容、就寝時刻などを簡単に記録していきます。

1週間から2週間ほど記録を続けると、自分なりのリズムやパターンが見えてきます。月曜日は症状が強く出やすい、午後になると体調が上向く、雨の日は調子が悪いなど、傾向を掴むことで先を見越した対応が可能になります。

6.3.2 優先順位をつけた活動選択

すべての活動を完璧にこなそうとすると、体に大きな負担がかかります。学校生活や仕事、家庭での役割、趣味や交友関係など、さまざまな活動の中で優先順位をつけることが大切です。

最優先すべきは、自分の健康と体調管理です。その上で、学業や仕事など社会生活で必要な活動、そして趣味や娯楽といった自分を豊かにする活動という順序で考えます。すべてを同時に行うのではなく、今の体力で無理なくできる範囲を見極めましょう。

体調が良い日には少し活動量を増やし、体調が優れない日には最低限の活動に絞るという柔軟な対応が重要です。予定を詰め込みすぎず、余裕を持たせることで、急な体調変化にも対応できます。

6.3.3 段階的な活動拡大の方法

長期間休養していた場合、いきなり通常の生活に戻ろうとすると失敗しやすくなります。少しずつ活動時間を延ばしていく段階的なアプローチを取りましょう。例えば、最初は午前中だけの登校や出勤から始め、1週間から2週間続けられたら午後まで延長するといった方法です。

活動の強度も徐々に上げていきます。最初は座って行える作業から始め、短時間の立ち作業、軽い移動を伴う活動へと段階を踏みます。運動についても、室内でのストレッチから始まり、散歩、軽いジョギングへと無理なく移行していきます。

段階 活動内容の目安 継続期間 次の段階へ進む判断基準
第1段階 午前中のみの活動、座位中心 1〜2週間 午前中の活動で疲労が残らない
第2段階 昼食後まで活動延長、短時間の立位作業 1〜2週間 昼過ぎまで集中力を維持できる
第3段階 夕方までの活動、移動を伴う作業 2〜3週間 夕方まで大きな疲労がない
第4段階 通常の活動時間、軽い運動の追加 継続 症状の再発がなく安定している

6.3.4 休息の取り方と質の向上

活動と同じくらい、質の高い休息を取ることが重要です。休息は単に横になって時間を過ごすだけでなく、体と心をしっかりと回復させる時間として捉えます。疲れを感じたら早めに休むことで、症状の悪化を防ぐことができます。

休息中は、スマートフォンやパソコンの画面を見続けることは避けましょう。目を閉じて静かに過ごす、好きな音楽を聴く、アロマの香りでリラックスするなど、副交感神経を優位にする工夫を取り入れます。深呼吸や簡単な瞑想も、短時間で効果的にリラックスできる方法です。

6.3.5 目標設定と振り返り

改善に向けた取り組みを続けるためには、適切な目標設定が助けになります。目標は具体的で、達成可能な小さなものから設定しましょう。「今週は毎日午前中だけでも学校に行く」「寝る時刻を30分早める」など、すぐに実行できる内容が理想的です。

1週間ごとに振り返りの時間を持ち、達成できたことを確認します。できなかったことがあっても、自分を責めるのではなく、何が障害になったのかを冷静に分析し、次の週の計画に活かします。小さな成功体験を積み重ねることで、自信が生まれ、前向きに取り組む気持ちが育っていきます

6.3.6 季節や環境の変化への対応

季節の変わり目や気温の変化、気圧の変動は、起立性調節障害の症状に影響を与えることがあります。梅雨時期や台風の接近時、季節の変わり目には特に注意が必要です。これらの時期は無理をせず、活動量を控えめにする配慮をします。

夏場は脱水に注意し、水分と塩分の補給をこまめに行います。冬場は体を冷やさないよう、温かい服装を心がけ、室内の温度管理にも気を配ります。エアコンの効いた部屋から暑い屋外へ移動する際など、温度差が大きい場合は体調の変化に注意が必要です。

6.3.7 活動記録を活用した改善

日々の活動記録は、整体の施術を受ける際にも役立ちます。どのような活動の後に症状が出やすいか、どんな対策が効果的だったかといった情報を施術者と共有することで、より適切なアドバイスや施術を受けることができます。

記録を見返すことで、自分でも気づかなかった改善のサインを発見できることがあります。以前は午前中まったく動けなかったのに、今は昼まで活動できるようになったなど、少しずつの変化を可視化することで、改善への実感が得られモチベーションの維持につながります。

6.3.8 挫折しそうな時の対処法

改善の過程では、思うように進まない時期や一時的に症状が戻ってしまうこともあります。そのような時は、焦らず今できることに集中しましょう。完璧を目指すのではなく、60点から70点を維持できれば十分だという心構えを持つことが大切です。

一人で抱え込まず、家族や信頼できる人に相談することも重要です。同じような症状を経験した人の話を聞くことで、「自分だけではない」という安心感が得られることもあります。辛い気持ちを言葉にして外に出すことで、気持ちが軽くなることもあります。

調子が悪い日が続いても、それは決して後退ではなく、回復への過程の一部です。体は常に良くなろうとする力を持っています。適切なセルフケアと整体でのサポート、そして日常生活での工夫を続けることで、必ず改善へと向かっていきます。自分のペースを大切にしながら、一歩一歩進んでいきましょう。

7. まとめ

起立性調節障害は、自律神経の乱れによって血圧調節機能がうまく働かなくなることで起こる症状です。朝起きられない、立ちくらみ、めまい、頭痛など、日常生活に大きな影響を与える症状ですが、適切なセルフケアと整体によるアプローチで着実に改善していくことができます。

この記事では、起立性調節障害を改善するための具体的な方法をお伝えしてきました。まず大切なのは、起立性調節障害がどのような状態なのかを正しく理解することです。自律神経の働きが低下し、起立時に血圧を適切に調整できなくなることで、脳への血流が不足してさまざまな症状が現れます。思春期の子どもに多く見られますが、大人でも発症することがあり、決して珍しい症状ではありません。

原因としては、血圧調節機能の低下が根本にありますが、生活習慣の乱れやストレス、心理的な要因も大きく関わっています。夜更かしや朝食抜き、運動不足といった生活習慣は自律神経のバランスを崩し、症状を悪化させる要因となります。また、学校や仕事でのプレッシャー、人間関係の悩みなどのストレスも、自律神経に影響を与えて症状を引き起こすことがあります。

セルフケアでは、まず生活リズムを整えることが何よりも重要です。朝は急に起き上がらず、布団の中でゆっくりと体を動かしてから起きる習慣をつけましょう。カーテンを開けて朝日を浴びることで、体内時計がリセットされ、自律神経のバランスが整いやすくなります。

水分と塩分の摂取も、起立性調節障害の改善には欠かせません。1日に1.5リットルから2リットルの水分を、こまめに分けて飲むことで血液量が増え、起立時の血圧低下を防ぐことができます。塩分は1日10グラムから12グラムを目安に、食事の中で無理なく取り入れていきましょう。スポーツドリンクや梅干し、味噌汁などを活用すると続けやすくなります。

運動については、激しい運動は避け、自宅でできる軽いストレッチや散歩から始めることをおすすめします。寝た状態から座る、座った状態から立つといった動作をゆっくり行うだけでも、血圧調節機能のトレーニングになります。足首を回す、ふくらはぎを伸ばすといったストレッチは、下半身の血流を促進し、血液が脳に届きやすくなる効果があります。

睡眠の質を高めることも、自律神経を整えるために非常に重要です。毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる規則正しい生活を心がけ、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控えましょう。部屋の照明を暗めにし、リラックスできる環境を作ることで、質の良い睡眠がとれるようになります。

食事では、バランスの取れた栄養摂取が基本となります。特に朝食は必ず食べるようにし、タンパク質やビタミン、ミネラルをしっかり摂ることで、体のエネルギーが作られ、自律神経の働きをサポートします。欠食や偏った食事は症状を悪化させる原因になるため、3食きちんと食べる習慣を身につけましょう。

セルフケアとして取り入れたいのが、ツボ押しとマッサージです。自律神経を整えるツボとしては、手首の内側にある内関、手の甲の親指と人差し指の間にある合谷、足の内くるぶしの上にある三陰交などがあります。これらのツボを1日数回、3秒から5秒ほど優しく押すことで、自律神経のバランスが整いやすくなります。

血流改善のためのマッサージでは、ふくらはぎを下から上に向かって優しくさすったり、足の裏全体を揉みほぐしたりすることが効果的です。入浴後の体が温まっているときに行うと、より効果が高まります。強く押しすぎず、心地よいと感じる程度の力加減で行うことがポイントです。

整体による施術も、起立性調節障害の改善に有効なアプローチです。整体では、骨格の歪みを整えることで自律神経の通り道である背骨の状態を改善し、神経の働きを正常化していきます。特に首や背中、骨盤周辺の調整は、自律神経のバランスを整える上で重要な役割を果たします。

整体が起立性調節障害に効果的な理由は、体全体のバランスを整えることで血液の循環が改善され、自律神経の働きが正常に戻りやすくなるからです。筋肉の緊張がほぐれることで、血管が拡張しやすくなり、脳への血流が安定します。また、リラックス効果によってストレスが軽減され、症状の改善につながります。

整体で特に改善が期待できる症状としては、朝の起きづらさ、立ちくらみ、頭痛、肩こり、倦怠感などがあります。定期的に整体を受けることで、体の状態が少しずつ改善し、日常生活での不調が軽減されていきます。ただし、整体はあくまで体のバランスを整えるものであり、セルフケアと併用することでより効果が高まります。

日常生活での工夫も、改善を加速させるために欠かせません。学校や仕事では、無理をせず自分のペースで活動することが大切です。朝の遅刻が続く場合は、学校や職場に状況を説明し、理解を得ることも必要でしょう。保健室や休憩室で横になれる時間を確保したり、授業や会議の途中で席を立って体を動かしたりすることも有効です。

周囲の理解を得るためには、起立性調節障害がどのような症状なのかを丁寧に説明することが重要です。「怠けている」「やる気がない」と誤解されることも多い症状ですが、自律神経の問題で体が思うように動かないことを伝えることで、周囲の見方も変わってきます。家族や友人、先生や上司に理解してもらうことで、心理的な負担が軽減され、症状の改善にもつながります。

活動計画を立てる際は、無理をしないことを最優先に考えましょう。症状が重い時期は、無理に活動を増やすのではなく、できることから少しずつ始めることが大切です。調子の良い日と悪い日があることを前提に、柔軟にスケジュールを調整できるようにしておくと、ストレスが減り、結果的に症状の改善が早まります。

起立性調節障害は、一朝一夕に治るものではありません。しかし、セルフケアと整体を組み合わせ、生活習慣を整えていくことで、確実に改善していく症状です。焦らず、自分のペースで取り組むことが、長期的な改善につながります。

セルフケアの基本は、生活リズムを整え、水分と塩分をしっかり摂り、適度な運動を続けることです。これらは特別な道具や費用がかからず、今日から始められるものばかりです。毎日続けることで、体が少しずつ変化していくのを実感できるでしょう。

整体については、体のバランスを整えることで自律神経の働きをサポートし、血液循環を改善する効果があります。セルフケアだけでは改善が難しいと感じる場合や、より早く症状を改善したい場合は、整体を取り入れることを検討してみてください。体の専門家による施術によって、自分では気づかなかった体の歪みや緊張が解消され、症状が楽になることがあります。

大切なのは、セルフケアと整体のどちらか一方だけに頼るのではなく、両方をバランスよく取り入れることです。セルフケアで日々の生活習慣を改善し、整体で体のバランスを整えることで、相乗効果が生まれ、改善のスピードが上がります。

また、症状が改善してきたからといって、すぐに元の生活に戻すのではなく、良い習慣を継続することが再発を防ぐポイントです。起立性調節障害は、ストレスや生活習慣の乱れによって再び症状が出ることもあるため、改善後も油断せず、セルフケアを続けていくことをおすすめします。

起立性調節障害に悩む方は、症状によって学校に行けなかったり、仕事に支障が出たりすることで、自分を責めてしまうことが少なくありません。しかし、これは自分の意志や気持ちの問題ではなく、体の機能的な問題です。自分を責めるのではなく、今できることに焦点を当て、少しずつ前進していく姿勢が大切です。

周囲の理解やサポートも、改善には欠かせません。一人で抱え込まず、家族や友人、学校の先生や職場の上司に相談し、協力を得ることで、心理的な負担が軽くなります。理解してくれる人が身近にいるだけで、症状に対する不安が和らぎ、前向きに治療に取り組めるようになります。

起立性調節障害の改善には、時間がかかることもあります。数週間で劇的に良くなる人もいれば、数ヶ月から1年以上かけて徐々に改善していく人もいます。個人差が大きいため、他の人と比べるのではなく、自分のペースで取り組むことが重要です。

途中で挫折しそうになったときは、この記事で紹介したセルフケアの方法を見直してみてください。生活リズムは整っているか、水分と塩分は十分に摂れているか、ストレッチや運動は続けているか、睡眠の質は良くなっているか。一つひとつ確認しながら、できていないことがあれば再び取り組み始めましょう。

整体を受けている場合は、施術者とコミュニケーションを取りながら、体の変化を共有することも大切です。どの部分が改善してきたのか、まだ症状が残っている部分はどこか、日常生活での困りごとは何かなどを伝えることで、より効果的な施術を受けることができます。

セルフケアと整体を組み合わせることで、起立性調節障害は必ず改善に向かいます。自律神経のバランスが整い、血圧調節機能が正常に働くようになれば、朝もスムーズに起きられるようになり、日中の活動も楽になっていきます。立ちくらみやめまいが減り、頭痛や倦怠感も軽減されることで、学校や仕事にも前向きに取り組めるようになるでしょう。

この記事で紹介した方法は、すべて安全で、今日から始められるものです。特別な器具や高額な費用は必要ありません。まずは自分ができることから、一つずつ試してみてください。小さな変化の積み重ねが、やがて大きな改善につながります。

起立性調節障害で悩んでいる方は、決して一人ではありません。同じような症状で苦しんでいる人は多くいますし、適切な対処法を実践すれば改善できる症状です。焦らず、諦めず、自分のペースで取り組んでいけば、必ず光が見えてきます。

セルフケアで生活習慣を整え、整体で体のバランスを調整し、周囲の理解とサポートを得ながら、起立性調節障害の改善に向けて一歩ずつ進んでいきましょう。この記事が、あなたの回復への道しるべとなることを願っています。

何かお困りごとがありましたら当院へお問い合わせください。